第22話 日々の感謝
「はい。確かに受け取りました。こんなに早く返さなくても良かったのに」
「いえ、ジェフさんには色々融通を効かせてもらいましたので」
色々あって後回しになっていたが、以前ノーランさんから受け取った資金を手にローン返済のため、ジェフさんの元を訪れていた。
「それにしても、イツキくんのアイディアは凄いね、2つとも凄い人気じゃないか」
「ノーランさんの宣伝が上手なおかげですよ」
「いやいや、ノーランでもあんな商品を生み出すことは出来なかった。イツキくんの柔軟な発想のおかげだよ」
「アハハ……ありがとうございます」
俺は自分の世界の商品をこっちで開発してもらっただけだからな……
褒められるとなんか罪悪感が……
「ああ、そういえばノーランが呼んでいたよ」
「ノーランさんが……?」
「なにやら、以前販売した扇風機の売り上げを渡したいとかなんとか」
「分かりました、それじゃあノーランさんのお店に寄ってみます」
俺はジェフさんに挨拶を済ませ、ノーランさんのお店に向かった。
扇風機の売上か……
今度はどのくらい渡されるんだろうか……
あまり渡されても考えものだな。
「こんにちはー」
「おーイツキ!」
「いらっしゃい、イツキくん。少し待っててくれ」
店を訪れると、何故かアランが座っていた。
「なんで居るんだ?」
「なんでって、ノーランさんが家を訪ねてきたから、そのまま着いてきただけだよ」
それは本当なんだろうが、こいつの目的は少しでも金を手に入れて例の店に行く事だろう……
はぁ、懲りないやつだな。
「アラン、言っとくけど金なら分けないぞ?」
「な、なんの事だよー……俺が金なんて欲しがるわけないだろ?」
アランは苦笑いしながら俺の背中を叩き言った。
この反応……図星だったな。
まぁ、でも今回の扇風機はアランのアイディアのおかげで完成したのもあるし、少しくらい分けてやってもいいか……
「お待たせ、これが今回分の金貨1800枚だ」
「ぜ、前回より多いですね」
「ああ、今回は扇風機に加えてウォシュレットの分も入っているからね、当然だよ。それじゃあ、これ確かに渡したからね」
「ありがとうございます!またなにか思い浮かんだら来ますね」
「よろしく頼むよ」
お金を受け取り、ノーランさんの店を出るとアランは物欲しそうにお金の入った袋を見つめていた。
「そんな目で見るなよ」
「な、なんの事だ?お金なんて見てないぞ?」
「はぁ、今回はお前のアイディアもあるしな……ほら、ソフィーにバレるなよ?」
俺は金貨を10枚ほど分けてアランに手渡した。
金貨10枚もあれば、例の店でかるーく遊ぶくらいは出来るはずだ。
こいつがアホじゃなければ……
「イツキーー!!!お前は俺の親友だ!!」
「調子のいいヤツめ……」
肩を組み大喜びするアランは、そのまま歓楽街へと消えていった。
俺はそのままアランと分かれ、家へと戻った。
「アランさんと一緒じゃなかったんですか?」
「あ、あーうん。多分すれ違い……かな?」
とりあえず、ソフィーには黙っておかないとアランがまたボコボコにされちまう……
「そうだ、ソフィー。出かけないか?」
「お出かけですか……?」
「そ!先に行ってるぞ、ゆっくりでいいから」
俺は、普段の礼も兼ねてソフィーに何かプレゼントすることにした。
ソフィーとはこの街の中心地にある噴水前で待ち合わせをする事にした。
「お待たせしました!」
「おお、ソフィー……」
そこに立っていたのは、いつもの服装とは違う。
年相応の女の子らしい服装をしたソフィーだった。
か、可愛い……いつものソフィーも可愛いけど、それ以上に……
「あ、あの……」
「あ、ああ、ごめん。いつもとの服装とは違うんだね。か、可愛いよ……」
「か、可愛いだなんて……あ、ありがとうございます……」
イツキもソフィーも恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤に染め、互いに目を逸らしていた。
「えっと……行こうか」
「は、はい!」
俺とソフィーは買い物を楽しんだ。
陽が傾き、空が赤焼けに染る頃俺はソフィーと一緒に宝飾店に向かった。
「ソフィーがどんなのが好きなのか分からなくて。アクセサリーなら間違いないかなって」
「そ、そんな、イツキさんから頂けるなら何でも嬉しいです!」
宝飾店に入ると、その内装の煌びやかさに少し気圧されたが、ソフィーにいい所を見て欲しく何とか平常を装っていた。
「可愛らしい彼女ですね。本日は何をお探しですか?」
「か、彼女なんかじゃありません!!」
そ、そんなに力強く否定しなくても……
(イツキさんにはもっといい人がいると言いますか……)
ソフィーは小声でなにやら呟いていた。
「え、えっと、この子に日頃のお礼で何かプレゼントしたくて」
「それでしたら、この辺りはどうでしょうか」
店員が勧めてきたのは、それほど値段のしない耳飾りや指輪だった。
「ソフィーどれがいい?」
「そうですね……沢山ありますね……」
ソフィーは真剣な表情で選び始めた。
「では、これを……」
ソフィーが選んだのは青い宝石があしらわれた耳飾りだった。
ソフィーのブロンドの髪にも合う綺麗な耳飾りだ……
「ありがとうございます……大切にしますね」
優しい笑顔でこちらを見つめるソフィーは、夕焼けのせいか少し頬を赤らめているように見えた。
その日の夜アランはベロベロになって帰って来た。
「おおー、イツキー!帰ったぞー!」
「お、おお、おかえり……」
こいつ、めちゃくちゃ飲んだな……
というか、金貨10枚しか渡してないはずだが金は足りたんだろうか……
「そうだーイツキー!金たんなくてさー、代わりに払って来てくれないかー?」
「アランさん……?また、ハメを外しすぎたんですか……?」
大声で話すアランの声に反応して、静かに怒るソフィーがやってきた。
「んーなんで、さん付けしてんだよイツキー……」
アランは余程酔っているのか、ソフィーとは気が付かず顔を近づけ声の招待を確認した。
「……そ、そそソフィーさん!!えっと、これは、その、違くて……い、イツキ助けてくれ!」
「自業自得だな……」
俺はソフィーにこってり絞られるアランを見届け、アランの未払い分を払いに行った。
「イツキさん。ありがとうございました」
oh......beautiful DOGEZA
家に帰ると、アランは見事なまでの土下座をして出迎えた。
「お、おう……だいぶ絞られたみたいだな……」
「そ、そんなことない。前に比べれば大した事ない」
アランが顔を上げると、右頬と目の上を腫らし青アザができていた。
俺は何度見てもこのアランは頼りにならないと思った。
「アラン、もうやめとけよ?というか、金貨10枚に収めとけよ」
「いやぁ……そのつもりだったんだけど、煽てられるとついな」
ついって……こいつ、いつか悪い女に引っかかるな……
「はぁ、お前が使った金貨100枚は貸しにしといてやる」
「面目ない……」
アランは怒られた直後というのもあり流石に凹んでいる様子だった。
この様子がいつまで持つかは、甚だ疑問ではあるが……
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