第20話 新たな仲間
ビューラ王妃の解呪から半日が経ち、俺らは再び王城で持て成されていた。
今度は、ビューラ王妃を救った者として。
「ささ、幾らでも食べてくれ」
「「「「いただきまーーす!!!」」」」
また、このご飯が食べられるなんて王族の願いを聞いてみるもんだな……
「うまーーい!!」
「おいしいよー」
アランとナタリーは相変わらず、凄い勢いで食べ、その料理の味にほのかに涙を流していた。
「イツキさん、どうぞ」
「あ、ありがとうソフィー」
2人に比べてソフィーはやっぱり落ち着いてる。
今なんかも俺のために取り分けてくれてる。
ソフィーはいいお嫁さんになるな……うん。
「お母様、どうですか?」
「ありがとう、アリシア。だいぶ良くなったわ」
イツキ達が食事に舌づつみをうっている時、アリシアはビューラの寝室で回復魔法をかけていた。
「イツキ様はとても凄い方なんですーー」
ビューラはひたすらイツキの凄さを語るアリシアの頭を撫で話しかけた
「あらあら、アリシアはイツキくんの事が好きなのね」
「す、好き……というか、命懸けで仲間を守るイツキ様の姿がとてもかっこよかったというか……」
「……アリシアはイツキくんと一緒に冒険者をやりたい?」
「……それは、イツキ様と冒険者をすれば楽しいとは思います……」
「そう……なら、こうしてみたらどうかしら?」
ビューラは悪い笑みを浮かべ、アリシアに耳打ちをした。その内容に驚愕したのかアリシアの頬は紅く染っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「美味しかったです。ありがとうございました」
「相変わらず、いい食べっぷりだ!」
食事が済んだイツキ達は寝室へと案内され、それぞれ眠りについた。
はぁ、ここ数日色々あったな……
マーシャルさんと手合わせして、プラチナ冒険者ですら恐れるというクノンルデア森林へ向かった。
そして、そこで炎王竜と出会い、その命を狙う夜竜との戦い。
なんだかんだあって、ビューラ王妃を助けることが出来た。
本当に色々あった。
瞼が重くなるのを感じ、俺は泥のように眠りにつき、気がつくと夜が明けていた。
「ま、眩しい……もう朝か……ん?」
目が覚めた俺の右手は何かを掴んでいた。
なんだこれ?どんどん指が沈んでいく、けど張りもあって、まるで水風船のようだ。
何だろこれ気持ちいい……
目を開けて右手に掴んでいるものを確認した俺は驚愕した。
こ、こここここれは……アリシア王女のむ、むむむむむむね……!!!
やばい、こんなのバレたら打首だ……!
というか、なんでここでアリシア王女が寝てるんだ?
とにかく、この事をバレないようにしなければ……!
「イツキさん、朝……です……よ……」
うん、終わった。
というか、起こしに来なくて大丈夫なんだよ?ソフィー。
でも、最後にいい思いがで出来て良かった。
「何か、言い残すことはありますか……?」
「え、えっと……大変良い物でした」
俺の悲鳴は城中に響いたようだった。
ボコボコにされ続けた俺をよそにアリシア王女はぐっすりと寝ていた。
「もう、二度とこのような事は無いように」
「は゛い゛……き゛を゛つ゛け゛ま゛す゛」
「ふぅ、朝食のあとアルベルト王と謁見なのでこのくらいにしておきます」
「あ゛い゛、あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛……」
朝食の際、アランとナタリーは俺の顔を見て引いていたが何とか誤魔化す事が出来た。
その後、朝食を取った俺らはアルベルト王とビューラ王妃との謁見に向かった。
「イツキ殿此度の件本当に感謝する」
「イツキくん、本当にありがとうございます」
アルベルト王とビューラ王妃は解呪の礼を述べ深々と頭を下げていた。
「いえ、俺はただエリノアさんを呼んできただけなので……それに、今回は俺だけじゃなく仲間が居たから連れて来ることができたんです」
ソフィー達は イツキに褒められたのが嬉しかったようで、皆一様に照れている様子だった。
「アリシアもわたしの為にありがとう」
「うむ、アリシアもよく頑張った……だが、危険な事はあまりせんでくれ」
アルベルト王は、娘を余程大切に思っているのか今回の事をあまり快く思っていない様子だった。
「あなた?アリシアはもう子供ではありません。子供扱いはダメですよ?」
「だがな……」
「ところで、イツキくん。アリシアをパーティーに入れてはくれませんか?」
ビューラ王妃はアルベルト王が話すのを遮り、俺に提案をしてきた。
「ぱ、パーティーにですか……?」
「ええ、そうです。アリシアはわたしと同じ聖女の固有スキルを持ちます。見たところ、イツキくんのパーティーには回復職が居ないように見受けられます。どうですか?悪い提案ではないと思いますが」
「わ、わたくしからもお願い致します!」
確かに、俺らのパーティーはソフィーが軽い回復魔法が使える程度で回復職は居ない。
アリシア王女の回復魔法の凄さは身をもって知っている……
しかし、一国の王女様をパーティーに向かい入れるなんて流石に荷が重すぎる……
「あ、ありがたいお話ですけど、流石に王女様をパーティーに向かい入れるのは……」
「あら、アリシアと同じベッドで寝たイツキくんはてっきりアリシアに気があるものだと思っていましたが……」
なんで知ってんだよ!というか、なに言ってんだこの人!
ここでそんなこと言われたら……
「イツキ殿……?」
「イツキさん……?」
ほらぁ……ソフィーの怒りが再燃した上に、アルベルト王からも怒りが漏れ出している。
「やるなぁイツキ……下手したらアルベルト王に殺されるのに……」
「イツキがそんなに節操なしだとは僕思わなかったよ」
なんでアラン達も信じてんだよ!
「違いますよね!?あれはアリシア王女が勝手に入ってきてて……!」
「あら、そうでした。うふふ」
うふふ、じゃないよ!
アンタかよ……アリシア王女を変にけしかけたのは……
怖い、この人は敵に回したらダメなタイプだ……
仕方ない…敵に回するよりいいか……
「はぁ、分かりましたよ……」
「これで決まりですね!良かったわね、アリシア。しっかりと頑張るのよ?」
「お、お母様……」
ビューラ王妃がアリシア王女に目配せをするとアリシア王女は頬を染め、照れた様子だった。
「イツキ様、足を引っ張らないよう頑張ります」
「えっと……よろしくお願いします。アリシア王女」
「これからは仲間なのです。敬語など使わず、どうかアリシアとお呼びください」
「わ、わかった……改めて、よろしく……あ、アリシア」
王女様を呼び捨て……これは、しばらく慣れないな
こうして、俺らのパーティーにアリシアが加わり、これで、俺らのパーティーは前衛、後衛、防衛、回復が揃い、パーティーとしてやっと形が出来上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます