第10話 王国の鍛治職人
アルベルト王国。
俺達のギルドのあるアグノリアもこの王国の統治下にある。
初代アルベルト王が建国をして1000年以上の歴史を持つ世界有数の大国だ。
現在、アルベルト王国は10代目国王アルフレッド・アルベルトが治めている。アルフレッド・アルベルトは他国から獅子王と恐れられ、国民からは賢王として尊敬されている。
この王国は誰に対しても平等で、領地内での争い事は決して許さない。
特に、現国王アルフレッド・アルベルトが治めるようになってからは争い事は激減し、他国からの侵略も一切許していない。
その裏には、獅子王と恐れられる現国王と国王の懐刀にして世界最強の呼び声高い王国騎士団団長マーシャル・フォード、この2人の抑止力がある。
そんな獅子王から直々のお呼び出しとは、今から胃が痛い……
そんな思いを抱え、王都の門をくぐるとマグワイアとは比べ物にならない程綺麗な街並みが広がっていた。
「ここが王都……綺麗な街だ……」
現代日本や世界の雑多なビル群では見られないほど均整のとれた街並みに高い空。こればかりは、元の世界じゃ見られなかった光景だ。
そして、街の中心に聳え立つ白く大きな城。あれがアルベルト王国の王城、あそこに行かないといけないのか……
「イツキさんは王都に来るのは初めてなんですか?」
「初めて……というよりマグワイア以外の街を知らないというか……」
「そんな人今どきいるだねー」
「まぁ、それなら王都は楽しいと思うぜ!マグワイアには無い店が沢山あるぞ!」
城に出向くのは明日のため、俺らは街を散策する事にした。
マグワイアには無い沢山の品を揃えた露店や、大人気スイーツ店、オシャレな服屋など沢山の店を見て回り、ソフィーはもちろんナタリーやアランと存分に楽しんだ。
そして、今回王都からの招集に応じた1番の目的である鍛冶屋へ向かった。
「おーー!すごいなこの店」
「そうだろ?ここは騎士団御用達の鍛冶屋だ。色んな武器や防具が揃ってる。他にも素材を持ってくれば自分だけの武器や防具も作ってくれるんだ」
騎士団御用達というだけあって、ここの職人はいい仕事をしている。どの武器も防具も見事なのものばかりだ。
「おう、なんだアランじゃねえか!!」
「よう、久しぶりクレマンさん!」
「久しぶりって、お前騎士団辞めたそうじゃねぇか!それで?今はそっちのアンちゃん達が仲間か、楽しくやってんならそれでいい!!」
アランとこの店の店主は顔見知りらしく、親しげに会話をしていた。
「イツキってんだ。こっちの2人は、ソフィーにナタリー。見た目は可愛いけどもの凄く強いんだぜ」
「ほぉー、そりゃ見ものだ。俺はこのカレンガ工房やってるクレマン・カレンガってんだ。アンちゃんたちよろしくな!」
「イツキ・アイザワって言います、よろしくお願いしますカレンガさん」
「クレマンでいい、俺もイツキって呼ばせてもらうぜ。そっちの嬢ちゃんたちもよろしくな!」
「分かりました。よろしくお願いしますクレマンさん」
「ソフィーです、よろしくお願いします」
「僕はナタリー!よろしくね!クレマンさん!」
スキンヘッドに筋骨隆々な肉体。見た目は怖いがどうやらいい人ってのには間違い無さそうだ。まさに漢!って感じの人だな
「イツキ・アイザワ……その名前、アンちゃん東の小国の出かい?」
「…まぁ、そんなところです」
「そりゃあ遠い所からわざわざ。で?今日はどうしたんだ?」
「あ、はい。俺らの装備を一新したくて」
「なるほどね……」
そう言うとクレマンさんは俺らの装備をじっと見つめた。
「まぁ、確かにその装備じゃ冒険者やっていくには少々心許ないが…嬢ちゃん達は見た感じ後衛職だろうし取り急ぎ必要ないだろ。だがイツキ、お前のその格好。そりゃなんだ?よくもまあその格好で冒険者できたもんだ」
「いやぁー……あはは……」
確かにこの世界の冒険者でこんなペラペラな服のやつなんて居ないか……
「こいつはこれでも相当強いんだよ。魔物を魔法や武器を使わずに倒しちまうし」
「魔物を素手で……!?」
「驚いたか?でもな……こんなので驚いてたらこの先イツキとやってけないぜ…」
「なんというか規格外の男なんだな……」
なぜかアランが威張っているのは置いといて、最近よく引かれる気がする……
「それじゃあ、防具を買いに来たのか?」
「防具も欲しいことには欲しいんですけど、いい剣があれば欲しくて」
「剣?イツキお前剣なんて使えたのか?」
「剣術も武術の1つだって昔親父に叩き込まれたんだ」
親父は相沢流なんて流派を作り上げ、様々な武術、剣術を取り入れていた。
その結果俺も幼少の頃から様々な武術を学び今に至る。
「剣か……どんな剣が良いんだ?両手剣に片手剣。少し珍しいのだとレイピアみたいなのもあるぞ」
「そうだな……こんな剣は無いですか?」
俺は元の世界で使い慣れていた刀を要望した。もちろんこの世界にはない可能性も考慮して絵と解説を混じえ。
「何だこの剣、刃が片方にしか無いじゃねぇか」
「刀って言うんです。俺の国では伝統的な剣で斬れ味も強度も抜群なんです」
「東の小国のねぇ……まぁ、作れねぇことは無いが1から作るとなると何か素材がいるな…」
「この素材なんて使えないですか?」
俺は王都の途中で出会った異様に硬くて大きいサソリの外皮を渡した。
「こりゃあ、アーマード・スコーピオンの外皮じゃねぇか!!これどこで手に入れたんだ!?」
「ここに来る途中の森で出てきたので俺が倒しました」
「アーマード・スコーピオンを倒したー!?こいつの表皮は鋼鉄以上の高度を持つんだぞ!?それを素手で……」
「確かに、こいつは妙に硬かったけど鋼鉄より硬かったのか。知ってたか?」
「いや、あの時初めて見た魔物だったしな」
「僕も知らなかったよ。イツキが簡単に砕いちゃうから基準も分からないし」
「わ、私も…」
「お、お前らとんでもないパーティーだな……」
クレマンさんはもう驚くのに疲れたという表情をしていた。
「ま、まぁ何にしても、これさえあれば刀ってのも作れる。出来上がりには2日ほどかかるがいいか?」
「2日!?そんなに早くできるんですか?」
「あたりめぇよ!俺の固有スキル鍛冶師はどんな武器防具も1級品に仕上げ、通常の5倍は早く作り上げることが出来る!」
「すごい固有スキルですね!」
「そうだろ?俺ァこのスキルのおかげで、カレンガ工房を王国1にすることが出来たんだ!」
「始まったよ、クレマンさんの自慢話…これ始まると長いんだよなぁー。放っておいて俺らの装備も見ようぜ」
この工房を王国1にした武勇伝を熱く語るクレマンさんを他所に、俺らは引き続き装備を見ていた。
ナタリーは隠れて狙撃がメインなため、新しい弓を、アランは新しく頑丈な盾を探し、ソフィーは魔法を使うため特に装備が必要なくナタリーと一緒に弓を選んでいた。
「いやぁーいい物買えたねぇ」
「全くだ……」
新しく弓や盾を買えた2人は満足気な様子で街を歩き、その後ろで俺はソフィーと話していた。
「最後何を頼んでいたんですか?」
「ああ、アーマード・スコーピオンとか他の素材がまだあったから追加でちょっとした防具も頼んだんだ。あの硬さなら俺の国の防具も作れるんじゃないかってな」
「イツキさんの国……いつか行ってみたいです」
「……いつか連れて行くよ」
連れて行くって言っても俺の国は異世界だ。絶対に行くことは出来ないが、ソフィーのこの笑顔を見ると断ることは出来なかった。
その日の夜、明日に備え俺たちは早めに床に着いた。
明日は、いよいよ獅子王と呼ばれるアルベルト国王との対面だ。どんな事が待ち受けているのか今から緊張で胃が痛い……まぁ、変な事にはならないと思うが一国の王と会うんだ。粗相のないようにしなければ!!
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