第3話 拠点を手に入れろ

「カイラさーん!これの鑑定お願いしますー!」


 ゴーレムを倒したイツキ達はギルドへと戻って来た。


「えっと…こ、これは…?」

「コボルトとゴーレムです!」

「ご、ゴーレム!?ゴーレムなんてこの辺にいるはず…」

「それがー…」


 俺はカイラさんに事の経緯を説明した。

 コボルト狩りをしていたら急にゴーレムが現れたこと。ソフィーとナタリー、2人と協力してゴーレムを倒したこと。説明をしてる時なぜかカイラさんは困惑している様子だったけど…


「え、えっと、処理できないので…1度ギルドマスターに報告しますので2~3日ほどお待ちください」


 カイラはコボルトとゴーレムの素材を持ち裏へと消えて行った。


「ギルドの人でも困惑するんだね…」

「そりゃあ、素手でゴーレム倒したってなればね…」

「2人とも何話してるんだ?」

「「あ、いや何もぉ〜」」


 2人は何を話していたんだろう…何か少し引き気味だった気がするけど…

 まぁいい、とりあえずご飯食べて今日は寝よう。

 俺はソフィーとナタリーと別れ、寝床についた。


 次の日、俺は2人とこれからの事について話し合うことにした。


「さて、俺らはパーティーを組む事になったわけだけど俺らのパーティーはまだ不完全だと思うんだ」

「ヒーラーとタンク役ですか?」

「ソフィー正解!」

「ヒーラーは分かるけどタンク役なんているの??」

「タンク…つまり俺らの盾となってくれる仲間が居れば俺らは安心して攻撃の準備をすることが出来る。準備さえ出来ていれば攻撃を外す確率も格段に減る」

「あ、そっか!」


 そう。タンク役を得ることで俺らはより戦いやすくなる。だけど、それは俺らに命を預けることになる。

 実績のある冒険者ならともかく新米の俺らにそんな物好きが来るかが問題だな…


「でも、今すぐ必要って訳でもないよ。今のところヒーラーは回復薬で大丈夫だし、まだ危険な魔物と戦う予定もない。だから取り急ぎ俺らに必要なのはお金だ」

「お金?」

「そう、お金!お金があれば拠点も手に入るし、装備も新調できる!そうすれば、より楽に冒険が出来る!」

「拠点があればお風呂なんかも自由に入れたりするの!?」

「お風呂…」


 どうやら2人は拠点の良さをお風呂としか見てないようだ…だが、俺も銅貨5枚を払ってお風呂も入れず硬いベッドで寝る生活とはおさらばしたい。どうにかお金を貯めてお風呂付きの拠点とふかふかのベッドを手に入れる。これがパーティーの当面の目標として決まった。


「でも、どうやって拠点を買うようなお金を用意するんですか?」

「報酬の良い依頼を受けるしかないかな」

「今の僕たちにそんな報酬の良い依頼は難しいんじゃないかな?」

「そうだよなー…どうすっかなぁー」


 今の俺たちに報酬の良い依頼は厳しい…だけど、俺らでもこなせる依頼だと報酬は低い。ってなると拠点やベッドの値段を下げる方が現実的なのか…?でも、そんな都合のいい相手…あっ…


「拠点はともかく、ベッドはどうにかなるかもしれない!」


 ソフィーとナタリーは不思議そうな表情を浮かべてた。


「俺、前に商人のおじさんを助けたんだ、その商人のおじさんにお願いしたら力になってくれるかも」

「なるほど…そのおじ様はなんという方なんですか?」

「えーっと…確かノーランさん…だったかな?」

「ノーラン…どこかで聞いたことあるような…」

「とりあえず、今日はそのおじさんのお店に行ってみよう!」


 俺たち3人は俺が転生初日に助けたおじさんの元へ行くことにした。

 この街の中心地に構えるというお店を探すことにした。


「ねぇねぇソフィー、街の中心にそんなお店あったかな?」

「んー、街の中心にあるなら有名なお店だとは思うんだけど…」


 おじさんが言ってたのはこの辺か?中心地とは言ってたけど、思ったより立地がいいな…こんなところに構えてるんなら案外有名な商人なのか?


「お?ここかな?おじさーん!居ますか?」

「「ここって…」」


 大きな入口を入ると綺麗な内装に、何人もの従業員。ありとあらゆる商品が置かれていた。


「いらっしゃいませ、お客様。当店は魔道具から日用品までありとあらゆる商品を取り揃えております。本日は何をお探しでしょうか?」

「えっと、俺ら商品を買いに来たんじゃ無くて…ノーラン…さん?に用があって来ました」

「申し訳ございません。ノーランは事前にお約束頂いたお客様のみ会うことが出来ます」

「えっと…以前助けたイツキという少年が来たとだけ伝えていただけませんか?」

「は、はぁ…少々お待ちください」


 おじさんは俺が思っているより大物なのか、会うことが難しいようだ。


「イツキくん!!ようこそ!!」


 おじさんは俺を見るやいなや、両手を広げ歓迎してくれた。


「「こ、この人ってノーラン・ブライトン!?!?」」

「イツキ!この人って…」

「ああ!俺が前に助けたんだ」

「いやいや、そうじゃなくて!ノーラン・ブライトンさん!ブライトン商会の会長さんだよ!」

「ブライトン商会…?」

「イツキ知らないの!?ブライトン商会!王国一の商人ノーラン・ブライトンが経営する商会だよ!」


 王国一の商人って…おじさんそんなにすごい商人だったのか…だからこんな立地にお店を構えられるのか。


「イツキくん、今日はどういった要件なんだい?私に手助けできることならなんでもするよ」

「えっと…俺らパーティー組んでるんだけど、活動するための拠点とかフカフカのベッドどうにかならないかなって」

「拠点にふかふかのベッド…そうだなー、拠点はともかくベッドならうちの商会に取り扱いがあるから好きな物をプレゼントするよ」

「「好きな…物…」」

「やったよ!イツキ!」

「ノーランさん!どれ選んでもらいいんですか!?」

「え、あ、ああ、好きな物を選んでもらって構わないよ」


 ソフィーとナタリーは目を輝かせてベッドを選び始めた。

 ベットの確保はありがたい…だが問題は拠点だ。拠点が無ければベッドを貰っても意味が無い。おじさんの商会はさすがに拠点となる家までは売ってないか…


「イツキくん、さすがにこの商会でも家までは売ってない…がツテならある。私がどうにかしてみよう。2日ほど待ってもらえるかな?」

「…2日。分かりました。2日後にまた伺います。それじゃあ、今日はありがとうございました」



「イツキくん、待たせたね」


 2日後、俺らはおじさんのお店を再び訪れていた。

 おじさんの横には何やら小綺麗な格好をした男が立っていた。


「ああ、紹介するよ。こちらこの街で不動産業を営む、ジェフ・ブラウン」

「どうも、ジェフ・ブラウンです。拠点になる家を探しているらしいね」


 物腰柔らかい雰囲気で握手を求めるジェフさんは紳士という言葉が似合う。


「イツキ アイザワです。そうですね…まだまだ新人で報酬の良い依頼は難しいのでそれほど高くない拠点が嬉しいんですけど…」

「なるほど…それなら、丁度いい物件が2~3個ほどあるので今からご覧になりますか?」

「ありがたいです!是非お願いします!ソフィーもナタリーも今からいいか?」

「大丈夫だよ!」

「私も大丈夫です」


 俺らはジェフさんについて行き物件を見て回った。

 1つ目の物件は、街の中心地にあり立地は良く綺麗だが、広さはそれほどでは無い。値段的にも俺らでも手は届くが広さから言えば高く感じる。

 2つ目の物件は、先程とは比べ物にならないくらい広いが、如何せん古い。それだけでなく街の外れにあるため、利便性も悪い。


「さて、先程の2つは前座。これがイツキくんパーティーに1番のオススメの物件だよ」


 ジェフさんが俺らに案内した3つ目の物件は、1つ目ほど良い立地では無いが不便の無い場所にあり、2つ目ほどの広さは無いが十分に広く庭まで付いている。値段さえ良ければ是非この物件にしたいが…


「出来ればこの物件にしたいんですが…」

「価格だね。そうだな…イツキくんは友人のノーランを助けてくれた恩もあるから、本来金貨100枚のところを銀貨100枚でどうだい?」

「金貨100枚が銀貨100枚…それってどうなんだ?」

「そうですね…この家を銀貨100枚で買えるとするともの凄くお得です。ただ、今の私たちに銀貨100枚も集められるかどうか…」

「ハッハッハ!すぐに用意できなくても大丈夫だよ。銀貨100枚を返せる時に返してくれればいい。気にせず住んでくれて構わないよ」


 本来、金貨100枚もする家を銀貨100枚で買える上に返せる時にってことは返せなければ実質タダで住めるみたいなものだ…本当にそれでいいならこの家にしたい。


「ソフィー、ナタリー、この家なんかどうかな?お金も都合のいい時でいいみたいだし、どう?」

「僕もこの家がいい!冒険者でこんなに綺麗な家に住めるなんて夢みたいだよ!」

「私もこの家がいいです!!」

「決まったようだね。それじゃあ、この家はイツキくんの物だ。お金は返せる時でいいから、また何かあれば相談してくれていい」


 こうして俺らは手に入れるまで何ヶ月もかかると思った拠点とふかふかのベッドをすんなりと手に入れることが出来た。

 こんないい家に住めるなんて異世界も悪くない!何より人助けするもんだな。

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