第9話不器用なアドバイス

「そろそろ1時間を過ぎるな。」


あの筋肉壁を連れて戻ってきたのにあいつはいやがらなかった。おかげで頭の血管が何本が切れたじゃねぇか。


まぁすぐに戻ってきたみてぇだが。


んですぐに隣の部屋にいても聞こえてきたあのバカマの声にやっぱりいなくてよかったな。ってしみじみ思っちまった。


「にしても長ぇ。なんで女の化粧1つでここまで時間取るかな。」


あの女の部屋にあった本、もう読み終えちまう。


続きがあるとか言ってたから取りに行きたいが今向こうの部屋に行ったらレオの餌食だ。


この部屋には本なんかねぇし。


さてどうするか。まだかかるのか?


「あの、待って下さい!イヴ君からは私1人で呼びに来いって!!」


レ「なぁ〜に言ってんのよ杏!その姿、サプライズさせるに決まってるじゃなぁ〜い!」


「なんだ?部屋の外うるせぇな。」


まってぇぇ


って言うあの女の声と


坊ちゃんを見返すわよぉぉ!!


って熱苦しい声。


それが俺のいる部屋の前で止まった。


「ちょっとまて、ってことはっ!!」


バァァン!!


レ「こらぁぁ!!女の子に暴言吐いた甘ったれイヴ野郎はここかぁぁあ!!!」


「あのバカ女!!言いつけも守れねぇのか!?」


獣みてぇにグォォォ!って咆哮しながら筋肉ダルマが部屋に乗り込んで来やがった!


しかもなんかすげぇキレてるし!


うるせぇからあの女1人で来させるつもりだったってのに!!


レ「坊ちゃん!!んもう、女の子になんて口の利き方!!」


「うるせぇな、なんでてめぇが来てんだよレオ。あの女どうした」


レ「ちゃぁ〜んといるわよ、ほら!」


あのバカしくじりやがって。


扉から出てきた瞬間に撃ち殺してやる。


「…((カチ」


「その…ごめんね、イヴ君…」


「…??誰だ」


レ「杏ちゃん。チャカしまいなさいよ、もう。」


あんず…?あのダッセェ地味女だよな。


目の前のコレが?


「似合うかな?さっきよりは可愛くなれたと思ってるけど…。」


「あぁ、あのバカ女だな。」


「何基準!?」


「俺が用意してやったメイクアーティストだ。さっきのクソダセェメイクと比べるなんざ無礼にも程があんだろ。」


レ「それはあんたよ、バカ。」


マジで誰か分からなかった。


スカートはレオが用意したのか?クリーム色のフワッとしたやつにオータム色のメイク。髪も緩やかに巻かれてて別人じゃねぇか。


これなら文句ねぇだろ。


「本当に…こんなに素敵に変身させてもらえるなんて…。ありがとうございます、レオさん」


レ「いいのよぉ〜!ちゃんと見返すのよ?」


「はい!」


「?誰をだ?」


レ「元彼よぉ。他の女と杏を比べて振ったんですって!最低!」


「あぁ、そりゃその男の判断が正しいな。ダセェんだよお前。」


「ザクッ」


「地味顔のクセにさらに地味にさせやがって。」


「グサァッ」


なんだ?本当の事言ったら俯きやがった。


つうか礼はどうしたんだよ。人にここまでさせたクセに。


ーベシ!!


「いで!?なんだレオ!!」


レ「あんたそのうち杏に捨てられるわよ。むしろ今ナイフで刺されても私庇ってあげないから。」


「はぁ?この臆病女にんな事できねぇよ。ったく。おい女…。え゙」


「ポロ…ポロ…」


「な、なんで泣くんだよ…?」


レ「んもう、バカ。ほら杏、泣かないの。あなたは確かに華のある顔じゃないわ?でもね、とても素敵な要素を持ってる。」


泣く事ねぇだろ!?てか泣く理由も分からねぇってんだ!!


地味って言ったからか?


でもそれは本人も自覚してるだろ!?


「あ、ありがとうございます…レオさん」


レ「慰めじゃないわよ?本当に。例えばこの大きな目。それと長いまつ毛ね。地味でもブスじゃないわ。むしろ可愛いわよ?素材はいいの。」


「そう、、ですか?」


レ「えぇ。だから自信を持って。坊ちゃんだってブスとは言ってないわよ!ね?坊ちゃん」


「あ?」


レ「ね?」


「…チッ。」


レ「ほら。」


ね?


だと?今の顔は何も言うなって顔じゃねぇか。


さすがに俺でもあの筋肉ダルマに襲われたら潰される。


それに最初っからブスなんて言ってねぇってんだ。被害妄想の塊め。


「ありがとうございます…」


「…お前は」


レ「坊ちゃん!」


「うるせぇよレオ。はぁ、その下向くの何とかしろ。」


「下?」


「あぁ。俯いて目を逸らすからナメられる。胸張って真っ直ぐ前見ろ地味女が。」


「う…。」


いつもオドオドしやがって。だから好き放題言われんだ。


「結果教えろよ。」


「?」


「俺がここまでしてやって敗北でしたは認めねぇ。胸張って前見て、その男黙らせてこい。いいな。」


「う、うんっ。頑張る」


「ふん。」


これでダメでしたなんか言ってみろ。


一生分の罵倒を浴びせてやる。

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