第7話癖強メイクアート
「お邪魔します。」
「靴は脱ぐなよ。ここはイタリアだ。」
「あ、そうだった。」
意外な申し出で困惑したけど、メイクアートさんって事はプロの方だよね?
そんな人から教われる機会なんて絶対ないし。
…何より…やっぱり変わりたい。
だから自分に合うお化粧、探したいな。イヴ君の感想正直傷ついたし。
「呼んできてやるから座ってジッとしてろよ。部屋の中の物、何も見るんじゃねぇからな。」
「はい。ありがとう、イヴ君」
「ふん。それと1つ、かなりクセの強い奴だから俺は部屋を出てるぜ。終わるまで貸してやるから終わったら隣の部屋に呼びに来い。」
「うん!メイクアートさんと行くね!」
「お前1人でだ!!何のために逃げると思ってる!!」
に、逃げる!?ちょっと待って、そんなに癖強いの!?一体どんな人連れてくるつもりなの!?
どうしよう、やっぱり断るべき?だってあの暴君イヴ君が逃げるほどの癖強人間だよ??
「あ、あのっ」
「連れてきたら承知しねぇ。じゃ、待ってろよ。」
ーパタン…
「行っちゃった…どうしよう今から恐い。」
一体どんな人を連れてくるつもりなんだろう。
ーチクタク、チクタク…
「…」
チクタク…チクタク…
「な、何かあったのかな?」
イヴ君に恐い事言われて緊張しながら待ってるけど。
そろそろ1時間になる…
私、夕ご飯の時間なんだけどな。
マ『杏ちゃ〜ん、ご飯できてるわよ〜』
「あ、ママの声だ。う〜ん。」
鏡の向こう、私の部屋の方からママの呼びかけが聞こえる。
もしかしたらイヴ君、まだ来ないのかも。呼びに行きたいけど部屋出ちゃいけない感じだったし。
そもそも人のお家勝手に歩き回るのよくないよね?
「書き置きして行こうかな。お腹空いちゃった。 」
食べてすぐ戻れば、きっと怒らないよね?たぶん。…たぶん。
「す、すぐ食べてこよ。」
お願いだから怒らないで下さい…泣
◇
「ご飯美味しかった〜!さて!」
私史上最速!20分でご飯食べられた!ママには急いでどうしたのって聞かれちゃったけど、お化粧の練習って言ってきたし。
よーし!頑張るぞ!
「よいしょ…。あれ?」
男「…」
「え…っと。初めまして?」
鏡を通ってイヴ君のお部屋に入ったら見た事ない長身の筋肉すごい男の人が待ってた。
本当にすごいの。筋肉の壁って感じ。
すごい私をジッと見てる。
男「albicocca?(杏か?)」
「イタリア語…私も勉強しようかな。。」
男「日本語じゃないか…って事は杏って名前の事か。」
「わ、日本語お上手!はい、私イヴ君のお友達の杏と言います。よろしくお願いします。えっと、イヴ君がここで待つようにって…え?」
ペコーとお辞儀して頭を上げたらすごくウルウルしてる筋肉さん。
白いハンカチで目元押さえて泣いてる?みたい?
私何か悪い事言っちゃったかな?
男「あのお坊ちゃまにこんっっな素敵なお友達できるなんて!!」
「え?お坊ちゃま??」
男「んもぉ〜!こんな可愛い子ならもっと教えておいて欲しかったわぁ〜ん!杏ちゃんよね?ちょっと待っててん♡」
「!?!?」
きゃぁー!もう嬉しいん♡
…
!?!?
え!?!お、おかま??
ツーブロックで筋肉壁の長身の…黒スーツ着た…オカマ…。
両手フリフリしてお部屋出てっちゃった…走ってるのかな?声は遠のいてるけどすごくハッキリこの部屋まで聞こえてくる。
えっと。。
「癖強い!?」
逃げるってそういう事なんだ!!びっくりしちゃったよ、急に人が変わるんだもんっ
第一印象は少し怖いけどカッコイイ男の人だったのに!!前もって言っておいてほしいよこんなの!!
ーパァァン!
「きゃぁ!?」
男「杏ちゃん、おっ・まっ・たっ・せぇえん!さぁさぁ、これにお着替えして?絶対似合うわぁ〜ん♡」
「あ、え、え?」
男「早くしないと脱がせちゃうわよ?」
「は、はいっ着替えます!!」
男「宜しくねぇ〜!その間に私はヘアセット用意しておくわ。とても滑らかで深い黒髪…うぅ〜ん!す・て・き♡腕がなるわぁ!」
「呆然…」
ゼェ、ハァってすごい息切れ!!走って来たのかな??
キャッキャッウフフして、扉すごいしなってたよ??壊れてない??
ちょっと待っててって言われたけど光の速さで戻ってきたし。。
あ、頭の整理追いついてないけど言う事聞かないと大変な事になりそう。
私生きて帰れるかな…?
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