第5話暴君降臨

次の日の夕方。


友「おっじゃましまーす!」


昨日の約束通り、今日はメイクショップ行って色々なお化粧品を買ってきたの。


もうすっごく種類あって何を買ったらいいのか全然分からなかった。


だから友達に見立ててもらって買ってきたんだけど。


私似合うのかなぁ。


「好きなとこに座ってて、お菓子持ってくるから。」


友「ありがと!ちなみにお菓子なに?」


「んーとね…ヨモギ団子なんてどうだろ。こし餡だよ!」


友「いいねぇヨモギ!私緑茶がいい!」


「くすくす。うん、分かってる。今日の串団子は何の気分?」


友「そうだな、ヨモギがこし餡ならみたらしで!」


「分かった、ちょっと待っててね。」


友達の嬉しそうな声を聞きながら部屋の扉を閉める。


あの子和菓子がとても好きな子だから早起きして作ったんだよね、今日のお礼に。


仲良くなれたきっかけも和菓子だった。


手作りのお団子をお昼に食べてたら美味しそうだねって声かけてくれて。


1つどうぞってあげたら目をウルウルさせて美味しい!って言ってくれたの。


嬉しかったなぁ。


ートントン


「お待たせ」


友「待ってました♡杏の作るお菓子はどれもとっても美味しいんだよねぇ〜!さっそく1つ。」


「ありがとう。でも慌てすぎて詰まらせないでよ?」


友「分かってる。ぱく!んん〜!おいひぃ…お店出しなよ〜」


「くすくす。それほどじゃないよ。」


友「いやいや。この鼻に抜けるヨモギの香り…草の渋みの後にくる餡子の甘さとなめらかさ!お金とってもいいくらいだよ。」


「あっははは!もぉ〜上手なんだから。」


美味しい美味しいって満面の笑みでパクパク食べてくれて嬉しいな。


…で、でも。お化粧はいつするんだろ。


忘れてない??


友「みたらしもいいねぇ!程よい甘さとモチモチのお団子に絡みつくタレ!炙ってある表面がなんとも香ばしい…市販品なんてもう食べられないよ!」


「そんな、市販品の方が美味しいよ?あとそろそろお化粧しないと時間なくなっちゃう。お土産にも作ってあるからね!」


友「ほんとに!?気が利くぅ〜!じゃ、いっちょイメチェンしてみますか!」


「ふふ!よろしくお願いします。」


先に手を洗ってくるね。って言って部屋を出て行っちゃった。


洗面台の場所、分かるかな?


追って教えてあげないと。


「…おい」


「わ!びっくりした…あれ?寝起き?」


「こっちはまだ朝の7:30を回ったところだ。うるせぇんだよお前ら。」


「ご、ごめんね。時差あるもんね」


「ったく。…それ。そんな美味いのか。」


「?」


「ヨモギってやつ。あとみたらし。」


顔だけぬっと出してる昨日のあの男の子が、眠そうな顔でクレームいれてる。


怒らせたかな?と思ったけど、ちょっと躊躇いがちに指さしてきたのは友達が絶賛してくれたお団子達。


ほしいのかな?そっか、和菓子は馴染みないか。


「好き嫌いはあると思うけど、日本では馴染み深いよ。食べる?」


「…1つ。」


「うん!はい、どうぞ。」


「最初にお前が1口食え。」


「え?でも人の食べかけなんて…」


「いいから食え。」


「う、うん。」


人の食べかけなんてイヤじゃないのかな?


しかも昨日知り合ったばかりの異性の食べかけなんて。


そうしろって言うなら私はいいんだけど。


ーぱく。


「あ、今回はすごくいいデキ!嬉しいぃ〜!」


「…はぁ…そうだ、お前はそういう奴だ。」


「え??なにが??」


「いや、いい。待っててやるから用事が済んだら新しいの用意しとけよ。同じやつ。」


「??これは??」


「食いかけなんか食うか。」


シッシッ。


「…」


えぇぇぇぇ!?!?


ど、どう言う事!?!?私確認したじゃんっ!!!食べかけなんていいのって!!


なんでそんな秒速で気持ち変わるの!?酷いよっ!!


しかも手払いまでされるし!!


「なるべく早くしろよ。あと少なくともこの後1時は騒ぐな。じゃ。」


「…」


言うだけ言って帰ってった…


なんたる暴君…


ーガチャ


友「いやぁ洗面台の場所聞いてなかったよね!お母さんに教えてもらっちゃった〜!あれ?どうしたの杏、団子持って鏡の前で。」


「な…なんでもない。なるべく静かにお化粧しよっか…」


友「なにがあったんだ。」

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