第6話 為すすべもなく身構える
「あっ……!」
しかし魔力は一瞬で霧散してしまう。肩ひもを腕まで下げられ、緩んだ胸元を寛げられたのだ。はみ出た胸はふっくらと大きく、見慣れた自分のものだとはとても思えない。願望が現れているのだとしたら、なんて恥ずかしいのだろう。
思わず視線を外したが、温かくも下腹部に直結するような甘い刺激が襲い、再び戻した胸元を見て目を見開く。
エリックに膨らみの先端を舌で転がされていた。私の胸とは信じられなかったけれど、この感覚はやはり自分のものと思わざるを得ない。言葉を失っている私に気付くことなく、エリックは慣れた仕草で片方に吸い付きながら、もう一つの先端を指で弄んでいる。
「やっ、舐めちゃ……」
聞こえているはずなのに、エリックは止まってはくれない。寧ろ宥めるように舐められてしまい言葉に詰まる。
エリックは今まで何人とこうしてきたのだろう。例え夢だとしても、そう思うだけで胸が苦しくて、切なくて集中なんてできない。私の知っているあの幼馴染の、十六歳のエリックも私の知らないところで、こんなことをしているのだろうか?
いつの間にか見つめすぎていたらしい。視線に気づいたのかエリックが見上げた。
眼鏡の奥の瞳が、優しく細まって顔が近づいてきて唇と唇が重なった。キスの合間に小さく「愛している」と呟かれて泣きそうになる。
どれだけたくさんの人と経験を重ねてこようが、彼が今、愛を囁くのは私なのだ。少し胸は痛むけれど、とても幸せだと思った。
唇を割って侵入してきた舌は、私のそれを捉えて離してくれない。ズクズクと甘い刺激が積み重なっていく。
「…………!」
指先が直に内太腿に触れて身じろいだ。唇が深く重なっていたから、声は上げられなかったけれど。更に奥まで侵入してきた手はそのまま進み、突き当たりに到達する。そのままショーツの上から中心を撫で摩られて声を上げてしまうも、相変わらず彼の口内に全て飲み込まれていった。
迷うことなく捉えられた一点を熱心に擦られ、そこからもたらされる初めての刺激に足がシーツを何度もかいた。初めての感覚なのに、夢にしてはあまりにもリアルすぎる。
「ひぅっ!」
「心拍数は少し早いが、魔力の通り道に異常はなし、か。もう少し続けさせて?」
「な、なにを……!」
足先に向かって布地が撫でていく。指が直接触れた感覚で、ショーツを脱がされてしまったと知った。閉じた秘裂を開くようになぞられ、摩擦のない、滑った感覚に嫌な予感がした。
その場所が濡れているなんて、粗相をしたか月のものか。そんな状態の場所を幼馴染に、エリックに触られているなんて。
「や、そんな……汚い」
「大丈夫だ。あの医療スライムに浄化の魔法も流してある。まぁ、そんなものなかったとしても関係ないが」
やはりあの大きなものは医療スライムだったのだ。身体全体を覆っていると思っていたスライムは実は部分使用だったのだろうか? でなければ見たことも聞いたこともない大きさだ。目を瞑っていたから確認したわけではないし、感覚として包まれていると感じた先入観なのかもしれないが。
しかし熱を持った部分を、再び指先で撫で摩られて思考が散り散りになる。刺激は強いけれど、あまりにも優しく触れられて、何とも言葉にし難いジクジクとした、されど明確に気持ちよさを感じていた。
「ハァ、九十六日ぶりだ。やっと直に触れる」
エリックが零した呟きに我に返る。沸騰しかけた脳が温度を下げた。
……九十六日って、それだけ私は眠っていた? 全てが夢だとしたら、あまりにも具体的な数字だ。
「それってどういう……、きゃっ!」
答えを知っているであろうエリックに質問をぶつけたかったけれど、温かいものが先ほどの部位を這う。
「や……! やぁっ!」
それが彼の舌だと気付いて、あまりの羞恥に抵抗しようとするが翻弄されてしまい叶わない。なんとかエリックの頭を退かそうと手を置いても、力が入らず髪を掻き混ぜるだけ。
段々と部分的に芯を持ったような、固くなったような感覚がした。なんで、どうして、と考えるけれど、口からは喘ぐように息をすることが精一杯。
「可愛い、ラリア」
刺激を受ける度にどうしてもその一点に意識が集中してしまい、背筋にゾクゾクと寒気に似た初めての快感が駆け抜けていく。
「……っあ!」
きつく吸われた瞬間、瞼の裏に火花が散って頭が真っ白になった。意思とは関係なく身体が大きく震える。私の頭が優しく撫でられて、漸くエリックがそこから顔を離してくれたことを知った。しかし全速力で走ったような衝撃に、ただ喘ぐだけで言葉が出せない。
「良かった。達したことによる変化以外には異常はないな」
……一体何が良かったのか、全く意味が分からない。夢だと思いたいけれど、感覚がリアル過ぎる。あと、いちいち身体の様子を調べるのもあり得ない。
「ああ、分かってるよ」
いや、それ絶対分かっていない。けれど息を整えることに精一杯の私にとって、言い返すのも億劫で。瞼を閉じて、ジンジンとした下腹部の疼きをやり過ごす。
するとまたふわりと優しい気配に包まれた。回復魔法を受けたのだ。重くなった瞼が軽くなって目を開けると、エリックはガウンの前を寛げていた。はだけた胸や腹筋は見慣れていたはずなのに、あまりの色気にドキドキと鼓動が早くなる。
「なっ!」
しかし視線をさらに下ろした私は言葉に詰まった。何あれ? ってエリックのアレ? 私のは散々見られて弄られたわけだから、お返ししてやりたいと思ったけれど、勢いよく目を逸らしてしまった。恥ずかしさと恐ろしさで直視できない。どうしてあんな状態なの!?
「ゆっくりするから異常があれば言ってくれ」
医療者の常套句のような台詞を吐いたエリックは、字のごとく怒張したモノを先ほどの敏感な場所に擦りつける。言ったところで「我慢しろ」と言われるやつでは?
「……ひっ」
丸い先端が当たった感触に息をのんだ。
いくら色恋に疎い私であっても、この行為が何かなんてさすがに知っている。逆上せた頭に冷や水を掛けられた気分になった。
遊びで行う人たちもいるが、これは世間的に恋人や夫婦がすることだ。
「こ、怖い……!」
「眠っていたから久しぶりだけれど、充分に慣らしたし、中も柔らかくなっているから大丈夫だ」
「そんなの知らないっ!」
初めては痛いと聞く。
そりゃそうだ。だって今まで月のもののように液体しか出たことがないのに、いきなりあんなものを入れるなんて!
けれど頭の片隅で初めての相手がエリックで良かったと思っているのも事実で。だからまともな抵抗ができないのだ。
あと普通にエリックの太腿を掴む力が強くて逃げられない。絶対に逃がさないという意志を感じるのは、一緒に過ごした時間が長いからか。
(あれ? だったら身を任せてもいい?)
それならこんな大人になったみたいなエリックじゃなくて、私のよく知るいつものエリックに捧げたい。こんな夢幻なのか、よく分からない世界で散らしたくないのに。
しかし無情にも先端が、ぬぷりと中に入ってきた。初めての感覚に、ぞわぞわとした恐怖とは違う何かを覚えた。今のところは痛みはないが、そろそろだろうと私は身構えた。
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