*9
お昼休み。私とミナは休憩室で持参したお弁当を食べている。
「のぞみ、なんか今日はご機嫌じゃん。何かいいことあった?」
ドキッ! 昨日おいしいフレンチレストランを見つけたことはミナには言えない。ごめんね、ミナ。ちょっと訳ありなんだ。
「そうかな。別に何もないよ」 何食わぬ顔で答える。
「ふーん」
「ミナこそご機嫌じゃん。昨日のお休みは彼といっぱい楽しんできたんじゃないの?」
「えへへー、まあねー」 まったく悪びれないミナ。
「今月でやっと店舗研修も終わりだね。次は本社で集合研修してやっと正式配属かあ。長いなあ」
4カ月の店舗研修が終わると本社での集合研修が2か月ある。合計6カ月の研修の後、正式な配属先に別れて行く。今どき新入社員研修に半年もかける企業は珍しいと言われているが、それはこの会社が人を育てることを大切にしているからだと思う。女性管理職の割合も一般の企業より多いらしいし、女性が長く働ける起業のランキングでも常に上位に入っている。それは私がこの会社を志望した理由の一つでもあるのだ。
私はデザイン部門の志望だから、もし叶えられれば本社での勤務になる。本社は今いる店舗がある隣の市だから、『ビストロ ラ・パルム』からはだいぶ離れてしまう。仕事帰りに立ち寄るのはちょっと厳しいかもしれない。いっそこのあたりに住んで会社へは電車で通うことにすればいいかな。あ、私ったら何考えてんだろ。あのお店にずっと通うこと前提で先のこと考えてる。私は思わず頭を振った。
「どうしたん?」
「あ? ううん、何でもない」
「へんなの!」
ミナが怪訝そうな顔で見たが、それ以上は追求してこなかった。ミナの機嫌がよくて助かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます