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それ以来、その男性は週に1回程度の頻度で来店し、そのたびに女性用の下着を購入して行った。いや、ご購入していただいた。
彼は別に何も悪いことはしていない。それどころか当店にとっては大切なお客様だ。その男性がご購入くださる下着、特にショーツは結構単価が高く設定されたものが多い。私も服飾デザイナーの端くれだから分かるが、価格の高いものはそれなりにいい素材を使っているし、縫製も国内縫製でしっかりしている。そして彼は何故かいつも私がカウンターでレジ係を担当しているときにやって来る、いや、ご来店下さる。
昼休み。今、私たちは休憩室で持参したお弁当を食べている。
「あの男、のぞみに気があるのと違う?」
「気がある女性の前で女性用の下着を買う?」
「そらそうか」
実は私も下着には結構こだわりを持っている。子供のころ、おへそまであるようなショーツが嫌でたまらなかった。もっとかわいいのを穿きたいとずっと思っていたが、それを母親に言うのは恥ずかしくてついに言えなかった。年齢が上がるとともにショーツは体にぴったりしたサイズのものにはなっていったけれど、本当に自分好みの下着を自由に買えるようになったのは服飾の専門学校に入って一人暮らしをするようになってからだったから、私は随分長い間自分好みのショーツすら自由に選ぶことができないでいたのだった。洋服や靴やコートやカバンなんかより、まず直接肌に付けるものにおしゃれをしたいと思う。お気に入りの下着を身に着けているだけでモチベーションが何パーセントかは確実に上がるし、1日幸せな気分でいられる。その逆もしかりである。だから私は今日着ける下着には結構悩む。
男女の違いはあるけれど、好きな下着を身につけたいと思う気持ちはよく分かる。だからあの男性が本当に望んでいるならその願いを叶えてあげたいと思う。男性が女性用下着を購入するのは敷居が高いだろうから、私ができるだけその敷居を下げてあげられたらって思うのだ。
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