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その日、私はカウンターに入っていた。平日の午前中、店舗は空いている。主婦とおぼしき数人の女性のお客さんがいるだけ。暇なので、カウンター近くの棚の商品をきれいに並べたり、広げられた商品を畳み直したりしていたが、男性のお客様がレジに進むのを見て、私はさっとカウンターに戻った。
「いらっしゃいませ!」
男性が黙ってカウンターに商品を置いた。女性用のショーツとキャミソール。それぞれ2枚づつ。私は何食わぬ顔で商品のバーコードを読み込んだ。お客様の顔をじろじろ見ては失礼だ。
ミナが言っていた通り、絶対お尻が半分しか隠れないようなインゴムのスーパーローライズのショーツ。素材は綿とポリエステルの混紡だから肌触りはいいだろう。白地に薄いピンクの水玉模様のものと、逆パターンで薄いピンク生地に白の水玉模様の2枚。いずれも前面には白のリボンがあしらわれていて、かわいらしいデザインだ。キャミソールも混紡素材でサイズはМ、色は2枚ともシンプルな黒だった。
そんなことを頭で考えながら素早く商品を丁寧に畳んで適当な大きさのビニール袋に入れ、セロテープで一点止めする。それをお客様にお渡しして、お会計を済ませる。
「ありがとうございました!」
そう言って頭を下げる。他のお客様と何ら変わらない対応が出来たと思う。そのお客様が足早に店を出て行ったところでミナが飛ぶように素早くカウンターにやって来た。今の一部始終を見ていたのだろう。
「のぞみ、どうやった?」
「スーパーローライズショーツ2枚とMサイズのキャミソール2枚お買い上げ」
「顔、見た?」
商品をお渡ししてお会計をするちょっとの間にちらっとお顔を見てしまった。
「イケメンやった」
確かに30歳前後、うーん30歳は越えてるかな、30台前半と言ったところか。
「そやろ! で、どう思う?」
「何が?」
「あの女物の下着、何に使うんやろ」
「やっぱり着るんじゃないかな。新しい下着をすーはーしても楽しくないと思うし」
「うち、この前彼氏に聞いてみてん。そしたら『そらチ〇コに被せてシコシコするに決まってる』って言うてた』
「キャミは?」
「うーん。そっちは着るんとちゃう? キャミ着てショーツをチ〇コに被せてシコシコ」
「高橋さん! 佐々木さん! 仕事中に何おしゃべりしてるの!?」
教育係の先輩に叱られて私たちは慌てて自分の持ち場へと戻ったのだった。
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