第14話 Dランク昇格試験
翌朝、俺の所属する探索者パーティー「
まずは昇格試験の申請を行わなければならない。
異界予約・昇格試験窓口と書かれた看板の下げられた受付に行くと、ラインは職員の人魚さんに話し掛けた。
「Dランク昇格試験を受けたいのだが」
「予約手続きを行いますので、ギルドカードを提示してください」
「これだ」
「……はい、確認しました。今日の12時よりA-3ルートで試験を行いますので、二層のゲートでお待ちください」
人魚さんは引き出しから一枚の地図を取り出して、ラインに差し出した。
「こちらが
「ああ、分かっている」
そう言うとラインは地図を受け取った。
用事が済んだので、俺達はダンジョンに向かうことにした。
ゲートに続く列に並びながら、リジーがひとりごちる。
「エンキは競争率が高いって聞いたからさぁ、すぐに予約を取れるとは思わなかったなー」
「昇格試験は優先度が高いそうだからな。その分責任は重大だ」
「へいへい、分かってますよーだ」
だが、その分だけ高い戦闘能力と継戦能力を問われる戦場だ。
その特殊な地形も相まって、雪崩のように降り注ぐ魔物を倒し続けるのは容易ではない。
だからこそ、ここを無事に切り抜けることができれば一人前の探索者として認められるのだ。
俺達はダンジョンのゲートを潜ると、
ここはアクアマリン市の多くの場所で建材として使われている
そこでは筋骨隆々の石工達が岩盤を切り崩し、加工していた。
彼らの着ている服にはでかでかと「アクアマ組」のロゴが描かれている。
街を支える採石場だけあって、その規模は大きくここで働くジャイアントは少数派のようだった。
リジーが道に転がっていた岩を蹴飛ばすと、ゴロゴロと転がった岩から足が生えて、カサカサと逃げて行った。
ミミックシェルクラブだ。
こいつは普段は
プレーリーラットと並ぶ雑魚魔物の代表格で子供でも倒せるくらいに弱いんだが、昔から続く暗黙の了解で石工達しか手を出してはいけないことになっている。
とはいえ、いくら弱いといっても魔物は魔物だ。
たまーに無知な労働者が仕事をサボって昼寝して、このミミックシェルクラブの餌食になっている。
用心するに越したことはない。
俺達は採石場の奥にあるレンガで作られた広場までやってきた。
俺はポーチから懐中時計を取り出して時間を調べた。
現在時刻は10時22分か。
「あっ、もしかしてそれマジックバッグ?」
「昨日買ったんだ。いいだろ」
「いいなぁー、アタシも欲しい。買ってよ、ねぇー」
「やだよ。これ高かったんだから」
ない胸を押し付けておねだりしてきたリジーを、俺はひっぺがして放り捨てた。
こいつ、最近やたらとベタベタしてきてウザいんだよな。
いつもこうやってパーティーを壊してきたんだろうか。
「ちぇっ、残念。買ってくれたらイイことしてあげようと思ってたのになぁ」
残念ながら俺はガキには興味ないんだ。
プレゼントが欲しかったら乳を百倍でかくしてからにしろってんだ。
まあ、そいつは無理な相談だろうけどな。
「ライン、予定まであと1時間半ほど時間があるが、これからどうする?」
「そうだな、試験に備えて腹ごしらえでもするか」
「だとさ、
「やったー!」
ゲートのある広場には探索者向けの沢山の屋台が並んでいた。
ダンジョンの中だけあって価格はそれなりにお高いが、今日くらいはいいだろう。
俺達は適当な屋台で飯を買うと、魔物が侵入しないように作られた段差に腰掛けて早めの昼食を取った。
なんでこういう場所で買って食う飯は美味いんだろうか。
飯を食っていると、ラインが
「試験のルートだが、まずここからここに侵入して、ここを抜けようと思っている。お前達はどう思う?」
「ほうだねー、そっちよりこっちの方がやりやすそうかな」
リジーは口をもごもごさせながら地図を指でなぞった。
「よし、ハルトもそれでいいな」
「俺は門外漢だからな、リジーに任せるよ」
ラインはペンを取り出すと地図に線を引いた。
試験中にいちいち地図を確認している暇などないから、今のうちにこのルートを頭に叩き込んでおかなければならない。
今後の作戦の打ち合わせを行っているだけで、すぐに時間は過ぎ去っていった。
時刻は11時59分。
俺達はゲートを潜り、二層にあるレンガ造りの小屋に移動した。
部屋の出入り口には閉め忘れ防止の為に落下式の
ダンジョンには
その為、深層のゲート付近には徹底的な安全対策が施されていた。
なお、このダンジョン内で使われている建材には特殊な加工が施されている。
ダンジョン内に持ち込んだアイテムを放置すると、1日もせずにダンジョンに吸収されちゃうからな。
同じダンジョンで採取された宝珠を混ぜ込むことで、ダンジョンの認識をごまかしているのだ。
これが未踏破ダンジョンの難易度が高いと言われる
ゲートに飛び込む度に魔物とこんにちはなんてしていたら、命がいくつあっても足りないぜ。
「準備はいいか?」
「おっけー」
「いつでもどうぞ」
「よし、行くぞ!」
ラインが扉を引き上げると、俺達は部屋の中から飛び出した。
Dランク昇格試験が、始まった。
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