第11話 試験と呼び出し

しばらくすると長期休暇前の試験が近づき、公爵家と私の噂は薄れていった。

友人たちも言えないと言った件を根掘り葉掘り聞くようなタイプではないので、以前と同じ生活に戻っていったわ。


「ミスティカ、ここはどうしてこうなるの?」

「あぁ、これはね……」


私も友人たちと必死に勉強する。

今までは就職のために頑張るだけで良かったが、公爵家に嫁ぐ以上、誰にも文句を言わせないくらいの成績が必要だ。


生徒会の仕事もこの期間はお休みなので、普段はできない放課後の友人たちとの交流がとても楽しい。

友人たちとのお勉強が終われば、自室でまたお勉強。

友人たちにお勉強を教えて理解を深め、自分では応用問題を学習する。

いつもの試験前のルーティンをしていると、あっという間に試験期間になる。


今回の試験もまあまあね。

今年までは筆記だけの試験だから大丈夫そうだけど、来年からは実技もあるのよね。

お父様に教師を頼めないか聞いてみないと。


明日は待機日。

身分順に採点がされて、合格した者から長期休暇だ。

同じ家格の中では前回の成績順に採点がされるので、私は子爵家の中では一番初めに採点していただけるだろう。

ちなみに落ちると長期休暇中は3日毎に追試があり、長期休暇が終わる前に合格できなければ落第となる。

とはいえ貴族は全員卒業が義務付けられるので、落第すると来年も同じ学年を履修する。

基本的は学園の学費は国が出すが、留年期間の学費は自分たちで払わなくてはならない。

そのため落第した場合は、自費での留年か貴族籍からの除名になる。


今回も問題なく試験が終わってホッとしたわ。

明日は久々にお寝坊しようかしら。


そんなことを考えていると、自室に学園の使用人がやってきて手紙を渡していった。

差出人はイルミネル様で、明日の午前中に社交棟の部屋への呼び出しだった。


生徒会の仕事もないはずだし、何のご用かしら。

婚約関係ならアルノール様からのお呼び出しのはずだし……。

もしかしたらもう引き継ぎを開始されるのかもしれないわね。

ノートとペンとインクとあとは何が必要かしら。


側仕えたちに明日の予定を変更するように伝え、明日やるはずだった帰省の荷造りを前倒ししてやってもらいながら就寝した。


翌日起床すると、手早く朝食を食べてから社交塔へ向かった。


部屋に入るとイルミネル様と、私のクラスの担任のルービル先生がいらっしゃった。

軽く挨拶を済ませて用件を伺うと、まずは試験の結果を通知していただけるという。

イルミネル様が手を回して朝一番で受け取れるように手配してくださったらしい。


「ミスティカ.ウィズディア嬢、今回もよく頑張ったな。おそらく学年1位になれそうだ。まだ侯爵家までの成績しか開示されていないがな。」


「ありがとうございます。この成績を維持できるよう努力いたします。」


「期待している。では私はこれで。イルミネル様、失礼いたします。」


先生が出たあと改めてイルミネル様にご挨拶をし、本日の用件を伺うと思ってもいないないようだった。


「本当はアルノールの仕事なんだが、早々に追試が決まってしまってね。

今回の休みの終わりの方で婚約披露のパーティーを開くことになってね。

公爵家の立場に準じたドレスを作らせようと思っていたんだ。

費用はもちろんこちらが支払わせてもらうから、遠慮なく仕立ててほしい。

良かったら僕に選ぶのを手伝わせてくれないか?

いきなり公爵家に相応しいドレスと言われても難しいだろう?」


「大変ありがたいお話ですが…よろしいのでしょうか」


「公爵家に恥じない装いをするのも仕事だと思ってくれれば良いよ。

騎士団の制服なども支給されるものだろう?

そういうものだと思ってくれれば良い。

では、さっそくデザイナーを入室させてくれ」


なんと、前もって呼んでいたらしい。

何人もの女性がドレスや靴、装飾品を部屋に置いては退室し、また商品を運んでくる。

気が付けば部屋中にドレスや小物が並んでいた。






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