第8話 結婚の打診①
とうとう公爵家の方々との約束の日。
まずはお父様がいらっしゃった。
「ウィズディア子爵令嬢。ウィズディア子爵がお見えです。3番の応接室へ。」
学園の使用人が呼び出しに来て、社交塔の小さい部屋へ案内される。
きっとスペルキャス家の方々も事前の打ち合わせをなさっているに違いないわ。
事前に決めたことを確認して、約束の時間に備える。
側仕えに昼食用のサンドウィッチを運んできてもらって腹ごしらえをしたら、いざ会談へ!
再び学園の使用人が呼びに来て、公爵家の待つ部屋へ向かう。
緊張するわ。
学生でもない公爵家の方なんてお会いする機会がないんだもの。
恙無く終われば良いのだけれど。
「失礼いたします。
ウィズディア家当主、カンヴィード.ウィズディアです。
こちらは長女のミスティカ。
お召しにより参上いたしました。」
ドアを開けると正面には小柄な男性。お父様よりも少し上に見える。
あれが公爵様ね。
その隣の金髪が目を惹く方は公爵夫人。
そして不機嫌なお顔のアルノール様といつも通りの微笑みのイルミネル様。
「そう固くならないで。私はハルフィア.スペルキャス。公爵の妻を務めているわ。
こちらが夫で当主のダドウィン.スペルキャス様。
それから次男で次期当主のアルノールと長男のイルミネルよ。
さあお座りになって。」
てっきり公爵様が話し出すと思ったら、夫人が切り出した。
「イルミネルから話は聞いていると思うけど、
ミスティカさんにはアルノールと結婚していただきたいの。どうかしら?」
公爵夫人のお言葉にお父様が返答する。
「大変光栄なお話ですが…アルノール様はよろしいのでしょうか。
ご存知の通り我が家はしがない子爵家です。
手前味噌ではございますが、娘は優秀です。
ただそれはあくまでも子爵令嬢にしては…という話でして、スペルキャス公爵家の皆様が求めるレベルかと言われますと…」
「お嬢様の成績と生徒会の実績を見させていただきましたわ。
ミスティカさんは多少の実務経験もお有りだとか。
私たちはミスティカさんの能力を高く買っておりますの。
確かに家格が釣り合わないと軋轢もありますわね。
後妻とはいえ伯爵家から嫁いだ私にはご心配がよくわかります。
けれどお嬢様のことはしっかりと公爵家でお守りするので安心なさってくださいませ。
ね、アルノール?」
「……ふん。」
やっぱり全面的に納得なさってないみたい。
「アルノール?」
公爵夫人の笑みが深まった。
「……まあ、お前は書類仕事はできる方なのだろう。俺と縁付けることをありがたく思うんだな。」
「ごめんなさいね。
アルノールはこれでも貴女のことは認めているのよ。
ミスティカさんのことは私がしっかり預かるので、ご納得いただけないかしら」
「もちろんでございます。
公爵家に置いてミスティカに求められる役割はなんでしょう」
「そうね。イルミネルの執務を引き継いでほしいわ。
イルミネルは優秀なのだけれど、体調を崩しやすくて…。
執務を代わってくれる人がいないと、なかなか休めないのよ。
アルノールだけではお恥ずかしながら家のことが回っていかないのよ。」
「かしこまりました。
ですが、やはり子爵家から公爵家という大きな身分差ですとやはりやっかみは避けられないものです。できれば第二夫人として嫁がせてはいただけないでしょうか。
愛人契約でも有難すぎるくらいのご縁ですので。」
お父様が果敢に交渉を持ちかけてくださる。
高等学校時代に相手を見つけていれば、こんな胃の痛くなる思いをさせなくて申し訳ないわ。
「愛人契約!良いじゃないか!」
お父様の言葉に反応したのはアルノール様だ。
「駄目よ、アルノール。愛人契約のような個人契約は20年毎に見直さなくてはならないわ。
ミスティカさんに20年後去られたりすれば、困るのは貴方よ。」
「……チっ。それなら第二夫人なら問題ないですね!
第一夫人と婚姻するまで、第二夫人とは結婚できない。
第一夫人を迎えるまで、お前の試用期間とする。
使えなかったら家に送り返してやるし、愛されるなどと思い上がるなよ!」
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長いので2つに分けました。
次話に続きます↓
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