第5話 お父様との相談
お父様との話し合いの結果、愛人か第二夫人として嫁ぐような形が良いのではないかという話でまとまった。
愛人は正式な国へ提出するような書類を交わすことなく、お互いの気持ちや個人間の契約でのみ関係を結ぶ。
公表するかも自由になっているため、疚しい関係も多い。
故に法的な拘束力もない代わりに何の保障もない。
ただ公表することで、パートナーがいると明確にすることができるため、トラブルや執拗な求愛を躱すことができる。
例えばパートナーを亡くした者同士が形式だけの愛人関係を結ぶことで異性からのアプローチを避けることなどに使われることもある。
もし公爵家から数年で愛人契約が破棄されたとしても、弟が貴族学園を卒業して数年間自分の立場を固めた後であれば、自領に戻ることもできるだろうという判断だ。
その場合は私の卒業後、最低でも5年程は契約を破棄できないように交渉する必要がある。
婚姻という縛りで一生支え続ける立場の者を求めているということで、愛人というのは難しいかもしれないが、愛される可能性がほとんどない家で一生を過ごすよりは、数年で自領に戻った方が幸せな生活を送れるのではないかというお父様の親心だ。
その場合は他の方と結婚するのは難しいため、一生独身で生きていくことにはなるが、1度は公爵家のパートナーを務めたということで、どこにも嫁がず自領に居続けるよりは風当たりは優しくなるだろう。
第二夫人は、夫はもちろん第一夫人も支える立場とされているので、領地外の仕事が多い家が迎え、一方が領地外の仕事で一方が領地内の仕事を担当したり、家のつながりで結婚したものの妻が能力不足の場合などに実務ができる者として迎えたりする。
そもそも仕事量の多い公爵家では第二夫人を迎えることが多いため、比較的受け入れられやすい提案だと思う。
またお世継ぎに対しての義務も権利も負わず、あくまでも実務の補佐という立場で輿入れを希望することにした。
他の夫人よりも優秀な子どもが生まれてしまった場合に、子爵家の血が確執を生みかねないからだ。
万が一子どもが産まれても、最初から継承権を放棄していれば争いに巻き込まれる可能性は限りなく低くなるだろう。
そもそも普段のアルノール様のご様子を見れば子どもができる可能性はほとんどないと思うけれど、念には念を入れて安全に過ごしたい。
他にも細かい希望を2人で擦り合わせていると、お父様が誰かに呼ばれたようで、後ろを振り返った。
私に断わって鏡の前から1度姿を消し、手紙を手にして戻ってきた。
「スペルキャス公爵家から手紙だ。
六曜日…ちょうど1週間後の昼過ぎに学園の社交室で話し合いを持ちたいと書かれている。
参加者は私とミスティカの2人だ。
内容は書かれていないが、この件だろうね。
しかし随分と性急だな。何か裏があるのかもしれない…。
ここから学園までは早くても4日かかるから、私はすぐに準備をしなくてはいけないようだ。
大方のことは決めたと思うけれど、他に話しておきたいことはあるかい?」
「大丈夫です。お待ちしております。」
お父様に別れの挨拶をして魔導具を終了させる。
心配そうに見ていた側仕えたちに1週間後の予定を伝え、魔導具の片付けと昼食の準備を指示して、プライベートルームに戻った。
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