第6話 穂乃果

「ちょっと、ゴミ捨てってしてないよね。今朝ゴミの日なんだけど」

 

 仕事から帰って来て玄関にもえるゴミ袋がどっさり置いてある。

今晩の食材を買ってきた穂乃果は、仕事から帰って来て、ただいまを言わずに叫んだ。お互いに共働きで家事は分担だが、明らかに夫より嫁のほうが割合が多い。

 家事に慣れていない夫の直哉は、いつもゴミ捨てを忘れる。皿洗いだけは嫁よりも姑みたいに綺麗だ。嫌味にも見える。


「あ、ごめん。忘れてた。昨日カンとビンの日だったからついつい安心しちゃってさ……次は絶対捨てるから!」


 穂乃果はため息をついて呆れる。これは、今に始まったことではない。忘れるが、穂乃果がミスしても責めることはないから安堵する。かかあ天下と言われても仕切るのは嫁である穂乃果の方だった。


「まあ、次から気をつけてね」


 怒りのスタミナ使うのが勿体なくなる。よその旦那様は指摘されただけで怒り心頭で家出までするって聞いた。温厚でよかったと穂乃果は、安心する。

「直哉、お酒でも飲もう。過ぎたことは忘れることにするよ」

「お、ポジティブだね」

「前からそう言う人だよ」

 穂乃果はイライラすることもあるけど、直哉で良かったと感じた。ビールで乾杯した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る