第5話 侑

「こんにちは。初見さんいらっしゃい! 来てくれてありがとうございます」


 結婚して、主婦になって2年目。時間に余裕が出てきたため、スマホでライブ配信を始めた。リスナーさんには既婚者だということは内緒で永遠の18歳ってことになってる。


「えー、リョウくんは20歳? 若いね。今成人式って18歳でするんでしょう」


他愛もない話で盛り上がる。ライブをしている時は別世界にいるようだ。すると、ガチャと玄関のドアが開く。


「ごめんねー、家族が帰ってきちゃった。また明日配信するね」


 慌てて終わらせて、玄関まで走る。


「まーくん、お疲れさま! 今日の夕飯は、カレーだよ」

「ただいま。そうなんだ。ちょうど腹減ってたわ。ねえ、侑。さっき、声してたけど、電話してた?」

「え、うん。まあ、大きい独り言だよ」

「へえ、そう。まあいいけどさ。あ、侑の好きなアーティストのライブチケット抽選で当たったよ。年末は最高の日になりそうだ」


 夫は配信のことを知らない。でもお互いにそれで成り立っている。


「やったー! 楽しみだね」


 あまり、深掘りで干渉しないところが夫のいいところだ。ある程度、自由な時間をそれぞれに作らせくれる。順風満帆とは、このことを言うんだ。

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