第4話 裕子

 ソファの上にごろごろ寝転ぶ聡志がいる。私は仕事が終わって、夕ご飯の買い物をしてこれから準備しようとリビングを通り過ぎる。

「ただいま~。お腹空いている?」


「おかえり。うん、そうだね。お腹空いてるよ。裕子、今日の仕事って早番だったの?」


 寝転んでいた聡志がキッチンまでやって来た。自然の流れで買い物してきた袋の中身をチェックして、何も言わず、どんどん冷蔵庫に入れてくれた。


「今日は、何にするの? ごはん」

「そうだね。麻婆豆腐にしようかなと思っていた」

「いいね。んじゃ、この木綿豆腐使うよね」

「うん、そう」


 裕子はエプロンをして、まな板を準備した。長ネギを切り始めた。


「裕子、休んでていいよ」

「え?」

「俺、下準備してるから。洗濯物の片付けするよね」

「うん。いいの?」

「大丈夫だから」


 前までずっとリビングで休んでばかりだった聡志が手伝ってくれている。何か悪いこと考えていないかと脳裏によぎる。


「何、何かついてる?」


「ねえ、何も企んでないよね」


「何も悪いことしてないよ。いや、同僚の人に奥さん大事にしろよって言われたんだ」

「なんで?」

「自分の体を大事にできるのは妻のおかげだから」

「改めたんだね」

「いつもありがとう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る