第3話 純子

「ごめんね。野原純子のばらじゅんこさん。申し訳ないけど、明日から大丈夫ですから」

 

 主婦になって数カ月。ずっと家にいることが耐え切れず、パート勤務として飲食店の調理補助業務に就職した。世界的に流行した風邪が職場にも広がり、飲食店業界は客足が遠のき、経営も危ないらしいとうすうす気づいていた。閉店するのも時間の問題らしい。


「そうなんですね。仕方ないですよね。お客さん来ないんじゃ、稼げないですし」


 純子は店長に肩をたたかれると、パートを辞める決意をした。帰宅してから、夫とテーブルで向かい合せに座る。


「お疲れ様。まずは、お茶でも飲もうよ」


 席についてすぐに、淳は、急須に入ったお茶を純子にいれた。


「ありがとう……あのね。もう仕事できなくなっちゃったよ」

「あー、そうなんだ。今のご時世では飲食業界も大変だもんね。仕方ないよ。気にしない。働けるところ探せばいいさ」

「……怒らない?」

「なんでさ?」

「辞めさせられたから。私、やっぱりフルタイム勤務にすればいい?」

「無理するなって。ゆっくり行こうよ。何とかなるから」

「うん、そうだね」

「新しい職場をゆっくり探そう」


 お金のことを考えたら、すぐに怒られそうと感じた純子は、夫に安堵した。

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