第2話 理恵

「あ、線入ってる!」


 朝のトイレ、毎月の女の子の日がなかなかが来ないと思った理恵は、昨日ドラッグストアで妊娠検査薬を買ってきた。なかなかできない待望の赤ちゃんを期待した。


「ねぇ、雄二。やったよ。できたよ、見てみて!」

「うん、やったね。よかったね。楽しみだね」

 

 ハグして2人でジャンプして喜んでいた。

 その後、2週間くらいして、何もないところで転んでしまい、理恵は、出血していることに気づく。

 すぐにかかりつけの産婦人科に行くと、担当医に想像もしたくないことを言われる。


「橘理恵さん。残念ながら、お腹の赤ちゃんは……」

「そうなんですね」


 平然と装うが、心中穏やかではなかった。家に帰り、夫の雄二にしがみついて泣く。


「うんうん」


 雄二は、何も言わずにぎゅっと抱きしめて、頭を撫でてくれた。辛く悲しい時にそっと寄り添ってくれる人だったなんて今まで気づかなかった。

 流産してしまうことは悲しいことだけど、夫の優しさに触れて、感動した。


「雄二、ありがとう」

「ううん。いいよ、大丈夫。今はゆっくり休もう」

「うん」

 

 涙が止めどもなく出る。悲しくて嬉しくてたまらない。未来は明るいはずだ。この人ならばきっと大丈夫だと感じた日だった。

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