ーー主婦ーー

第1話 実華

 結婚して2年目。

 親族のみの結婚式をして新婚旅行には行かなかった。付き合うきっかけは、会社の上司だったこと。いわゆる、寿退社だ。

 毎日まったりゆったり、旦那様の食事の準備や洋服の整理整頓、部屋の掃除を率先してやり続けた。

 だんだんと主婦業がマンネリ化してきた頃、義母からの発言がグサリとささる。


「実華さん、そろそろ孫の顔を見せてくれてもいいのよ?」


 言われなくてもそのつもりだったが、直接言われると傷つくものだ。2年も経つが、なかなか子供ができにくかった。


「そうですね。コウノトリが運んできますよ」

 作り笑顔でにこにこと必死に耐えた。

 車の中で将生と2人になった。


「実華、母さんの言うこと、間に受けなくていいからな」

「え、あー、うん。わかった」

「俺たちのペースがあるんだからさ、気にせず、2人の時間大事にしよう」

 ギュッと手を握られた。実華は、結婚してから将生のドキッとする瞬間があると思わなかった。予想外な対応に、惚れ直した。

「2人の時間だって大事だもんね。大丈夫、元気出た」

「うん。次の休みに温泉旅行、楽しんでこよう」

「うん。楽しむよ!」

 本当の笑顔で、喜んだ。この人を選んで本当に良かったと安心する実華だった。

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