第11話 茉里奈

「今野さん、お疲れ様です!」


 昼休みにお弁当を食べていると、横に座ったのは同僚の坂本 瞭太さかもと りょうただ。介護員に同時期に入社して、気の知れた仲だった。


「お疲れ様。瞭くん、今日、何勤務だっけ」

「遅番ですね。今野さんは?」

「そうなんだ。私は日勤だよ。休み時間少しだけかぶるよね」

「そうっすね……そういや、今野さんって、麦田素師むぎたそんしって好きです?」


 コンビニ弁当を食べ始める坂本は言う。茉里奈は少し考えてから答えた。


「うーん、まぁまぁ好きかな。よく聞くの?」

「そうなんですよ。実は、ライブ行こうかなって思ってるんですけど、一緒に行きません?」

「えー、瞭くんと? 彼女とかいないの?」


 茉里奈は、お弁当を食べ終えてハンカチに包んだ。


「いないから誘ってるに決まってるじゃないですか」

「あー、それって、私に彼氏いない前提に聞く?」

「……あ。ダメでした?」


 しばし沈黙になる茉里奈はしばらくしてから笑顔で答える。


「もちろん、行くに決まってるでしょう。独身の恋人いない暇人に任せなさい!」

「グループラインから個人ライン登録しますね?」

「ねぇ、誘い方、うまいね」

「いや、チケットの登録方法が個人情報入れないといけないんですよ」

「あ、そうなんだ」

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