第6話 凜華

 「おはよう。今日も、可愛いアクセサリーつけてるね。可愛いじゃん」


 職場の2歳年上の先輩に給湯室で声をかけられた。朝のお茶出し当番は、凜華になっていたため、マグカップにインスタントコーヒーの淹れ方をしていた。


「おはようございます。可愛いですよね、これ、モールで買ったんですよ。もう、一目ぼれで」


「いいなぁ、そういうの。私、出不精だから買い物行かないのよね。いつも適当なんだ」

「で、でぶしょう?! まさか、先輩。食べすぎ? 気をつけてくださいね」

「……私があなたに言ったのが間違いだったわ。ほら、コーヒーちょうだい。持ってくから」


 頭に疑問符を浮かべる凜華はそっと先輩に部長と係長の分のマグカップを渡した。


「げ、私がこの2人の分? いいけどさぁ、今朝のくじ運悪かったわ」


「よろしくお願いします」


 何かにつけて残業の仕事を持ってくる係長と定時になると上司なのにすぐ帰る部長。そんな中で毎日過ごしていた。そんな時、同い年の先輩である山口が、給湯室にやって来た。


「いつもありがとうございます」


 笑顔で言う彼に多少の疑いを持つ。


「何も出ないわよ?」

「本気で思ってます。特に凜華さんのコーヒーは」


 凜華は、その言葉に真顔になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る