第4話 光莉

 「お疲れ様です。斎藤部長。これ、佐々木さんから預かりました」


 入社してすぐの頃、雑用を掃除やお茶出しを主に任せられていた光莉ひかりは、書類のお届けもの係なるものを担っていた。


「あ、新人の木村光莉さんだね。お疲れ様。書類預かりますね。ありがとう」


「いえ、お安い御用です」


「ずいぶん、古い言葉知っているんだね」


「え? 古いですか?」


「……たぶん。古いんじゃないかな」


「すいません。変な言葉使って……」


「大丈夫、可愛いなって思ってただけだよ。気にしないで。木村さんって何歳だっけ」


 オフィスフロアはパーテーションで区切りをされているが周りに声は、丸聞こえだ。


「えっと、今年で23歳になります」


「若いなぁ……彼氏っているの?」


「部長、それ、セクハラですよ」


 光莉のメンターである坂本が横から、にょきっと顔を出す。


「あ、ごめん。言わなくてもいいよ」


 光莉は、頬を赤くして、照れながら話す。


「今は、いないです。絶賛、彼氏大募集中です!」

「木村さん、全然、気にしてないから大丈夫だね」


 斎藤部長は自然と笑顔になった。


「そしたら、立候補しようかな」

「部長、既婚者ですよ」

「あ、そうだった。ごめんね」

 まんざらでもない様子で悲しむ光莉だ。

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