第2話 眞由美

「起きなさい!!」

 

 実家から職場まで通っている。

 いわゆる子供部屋おばさんだ。


 家賃も光熱費も格安でこんなにも生活するのが楽ならそれでいいと思いながら働いている。

 職場は就職が決まってから2ヶ月目。

 まさに五月病のように体調を崩していた。人間関係がやっと見えてきたかなと思う頃、仕事のミスが増えて指摘も増えてしまって、メンタルが格段に崩れていた。

 通勤先は電車で20分。

 車にすると40分以上かかる。

 行きたくなくてふとんにほっかぶりになる。


眞由美まゆみ、今、行かないと休み癖つくから頑張って行きなさいよ」


「……絶対行きたくない。また仕事でミスするからやだ」

「仕事は誰だってミスするから!」

 母の声が響く。どうしても行きたくなくて、モヤモヤする。そんな時、母が気をきかせて今日仕事が休みだった隣に住む幼馴染の徹平てっぺいを呼んだが、それは余計なことだった。


「まゆ、休むん? 今日、具合悪いのか?」


 数年前に父が亡くなって、親子2人暮らし。徹平は父親や兄のような存在だ。眞由美は無言でやり過ごす。


「おばさん、休ませましょ。無理はいかんですわ」

「……そうね。わかった」

 他人の声には素直に聞く母に眞由美はホッと安堵する。徹平がいてよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る