ーー社会人ーー

第1話 真由

 「今日からこちらで働くことになりました木下真由きのしたまゆです。よろしくお願いします」


 OLに憧れて、一般事務の求人に応募した。今は産休で休む20歳の佐々木紀佳の代わりとして臨時職員として入社した。

 雇用期間は約6ヶ月。ハローワークに何度も通って、なかなか希望の就職先が決まらない時の担当者の人から紹介された。

 独身で短期を入社するのは珍しいらしく、今は内定を早く取りたかったからだ。つまりは妥協だ。この判断は合ってたかはまだわからない。社員は約10名ほどの小さな不動産会社だ。


「木下さんだよね。俺、今村 和真いまむら かずま。経理担当だからわからないことあったら何でも聞いてください」

「ありがとうございます」


 お茶出しや先輩の外回りへの付き添い、雑用。いろんなことを初日から覚えることになる。

「木下さん、お疲れ様。女子は男子と違って、仕事が多いからすぐに辞めちゃう人多いけど、木下さんは長く続けるの?」

「臨時的に採用されたので、そこはわかりません」

「長期雇用希望すれば、社長が延長してくれるよ?」

「……考えておきます」

(あわよくば嘘でも良いから寿退社かな)

「ちなみに今村くんは独身よ」

 事務長の遠藤 望がぼそっと言った。真由は頬を赤らめた。

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