第7話 奈那子

「今日も奈那子ななこの家行っていい?」


 大学で出会った駿しゅんと交際するようになって、8ヶ月。生まれて初めてできた彼氏だった。ひと通り、彼氏彼女だったら、するのはこれだろうというミッションは難なく、こなしてきた。初めてのことをするには、大きな壁があって、緊張もするし、これであってるかなと確認したいところだが、恥ずかしくて友人に相談もできない。尚更、性の悩みは言いづらい。キスは付き合って1か月記念日とか、それ以上のことは3ヶ月目とか色々独断で決めてきたつもりだった。

 だが、一線を超えた瞬間から駿との付き合いが変わり始めた。毎日毎晩じゃないと、人が変わったように怒る。私は、体目的で付き合っているのかと自問自答する毎日だ。


「奈那子、愛してるよ」


 事後に言葉を聞いて安心する。多分これで合っている。奈那子の作ったご飯も完食し、デートもまめだ。これを健全なお付き合いなのかは謎だった。


「ねえ、駿、信じて良いよね?」

「うん、当たり前」


 誰にも相談できず、悶々と過ごす奈那子だ。


「奈那子は、俺のこと好き?」

「え、あ、うん。大好き」


 自信はない。でも、とりあえず笑顔で言ってみる。恋愛は誰かと比較じゃなくて、自分で決めると誓った。

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