第6話 一華

「あー、終わった。やっと終わったね」


 椅子に座ったまま、両手を広げて伸びをした。今日の最後の講義が終わってホッとした一華いちかは、ため息をついた。隣に座っていた友達の心春こはるの顔がこわばっていた。


「一華はいいよねぇ。私なんて、これからバイトだよ」

「あー。バイト辞めて、勉学に励もうと思ってさ。あと、就活もしないといけないじゃん」

「いいなぁ。私はバイト辞められない。一人暮らしできなくなるから。いいよねぇ、本当」

「私は、実家暮らしで親が色々うるさいけどさ。1人暮らしは自由でしょ」

「まーまずね。どこでもメリットデメリットはあるよね」

「しかもこれから、腐れ縁の人の家に行かないといけないからさ」

「あ、彼氏の家?」


 一華は、面倒くさそうにうなずいた。


「もう遅すぎた春だよ。お母さんみたいな接し方になってるから」

「恋愛じゃなく生活感? それってもう結婚してるみたいじゃん」

「いーや、都合のいいように使われてる。しばらくご無沙汰だし」

「そう言いつつもリア充してるじゃん。私はいつでもフリーだよ」

「うそぉ、心春もバイト先の店長とラブラブでしょ?」

「いや、それは純愛じゃないし、危ない橋わたってるからさ」

 22歳の2人には色々ある。

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