ーーー大学生ーーー

第1話 希帆

 ざわざわと賑わう大学のオープンキャンパス。

 現役高校生が制服を着て、たくさん訪れるイベントだ。

 希帆きほは大学の在校生2年生。

 どんな大学かを高校生のみんなに説明する役割を担っていた。

 学内の施設や設備を見学して回るツアーで、ひときわ背の高い目立つ紺色の制服を着ている男子高校生が列にはみ出して、別な通路に行こうするのを一人声をかけて、こっちの順路だと誘導した。


「あ、あれ? 希帆先輩??」

「……ごめんなさい。どなた?」

「ちょ、忘れたんすか? 小学生の時のジュニアリーダーで、一緒にカヌーしに行ったじゃないですか」

「ちょ、ちょっと待って。もしかして千隼ちはやくん? う、嘘。全然面影ない」

「まぁ、身長がかなり伸びましたからね」

「うひゃぁ、あんなにちびっこでちょこまかくんだったのに」

「……ハズイことを言わないでくださいよ」


 昔の思い出話に花開いていると、他の高校生たちが沈黙のまま立ち止まっていた。


「あ、ごめんなさい。教育方針、カリキュラムなどの説明が講義室で行われますから、こちらへどうぞ」


 咳払いをして、学内の案内を続けた。数分前より鼓動が速くなるのが分かった。希帆と千隼は少し頬を赤らめて過ごす。恥ずかしさが増してしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る