第9話
第11章 - 熊本の影
ミヤザキは大阪を後にし、次なる目的地である熊本へと向かった。松田優作と坂東の関係が明らかになりつつあったが、その先に待ち受ける真実を掴むためには、熊本で起きている一連の動きに焦点を当てる必要があった。熊本では、松田が密かに関わっていた研究施設が存在するとされ、その中で「新たな兵器」と呼ばれるプロジェクトが進行中だという噂が流れていた。
ミヤザキの情報網によると、その研究施設は熊本市の郊外にひっそりと立つ、廃工場のような外観の建物だった。周囲に目立たないように設置されているため、表向きには一切の関係を持たない企業だとされていた。しかし、地下に隠された秘密が、この街を震撼させる恐ろしい事態を引き起こすかもしれない――その予感がミヤザキを動かしていた。
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熊本市郊外
早朝、ミヤザキは一台のレンタカーを借り、熊本市郊外の山間部に向かった。車窓から見える風景は、どこか懐かしくもあり、同時に不安を呼び起こすような静けさが広がっていた。日本の地方都市の風景、田畑が広がり、まだ朝の薄明かりの中で一日が始まろうとしている。
目的地に到着すると、彼は車を少し離れた場所に停め、徒歩で廃工場に近づいていった。周囲にはあまり人通りはなく、街の喧騒から隔絶されたような静寂が支配していた。しかし、ミヤザキはその静けさの中に潜む危険を感じていた。暗闇に隠された秘密――それを明らかにすることが、彼の使命だった。
廃工場の周囲は鉄のフェンスで囲まれており、進入には一度警戒を突破しなければならなかった。だが、ミヤザキはその手順を何度も繰り返していた。彼は身軽にフェンスを越え、施設の裏口に近づいていった。監視カメラの死角を巧みに避け、施設内に忍び込む準備を整える。
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地下施設
ミヤザキが施設内に足を踏み入れると、最初に感じたのは冷たい空気だった。まるで、何かが眠っているかのような不気味な感覚が全身を包み込む。廃工場の内部は、ひんやりとした鉄の柱と錆びた機械が無造作に散乱している。だが、その先に進むにつれ、彼は地下への階段を見つけた。施設の奥に、何かが隠されている――それを直感的に感じ取っていた。
地下に降りると、空気はさらにひどく冷たく、湿気を帯びていた。照明が不完全で、薄暗い中で壁を伝って進んでいくと、やがて金属の扉が現れた。その扉の先に何が待っているのか、ミヤザキには分からない。しかし、この扉を開けなければ先には進めない。
扉の前で数秒間、息を整えた後、ミヤザキは静かに扉を開けた。
扉の向こうには、大きな冷却装置と無数の端末が並んだ室内が広がっていた。その一角には、何か大きな箱のような物体が見えた。箱の表面には奇妙な符号が刻まれており、その周囲には厳重に警備された空間が広がっている。ミヤザキは、そっと足を進め、その物体に近づいた。
箱の中には、巨大な冷却装置があり、内部には何かが収められている様子だった。ミヤザキは近づいてその冷却装置を見つめると、冷却ガスが漏れているのか、周囲が白い霧に包まれていた。その霧の中に、わずかに見えるシルエット――人の形をしたものが、箱の中に横たわっている。
その瞬間、ミヤザキは息を呑んだ。箱の中に収められているのは、兵器ではなく――人間だった。だが、その人間はただの人間ではなく、改造され、機械的な部分が体に組み込まれていた。それはまさに「人体兵器」と呼ばれるべき存在だった。
「これが…」
ミヤザキは呟き、手に入れた情報と照らし合わせた。ウクライナの計画、松田優作の関与、そして坂東の目的。すべてが繋がり始めた瞬間だった。
箱の中の人物は、まだ生きているように見えた。改造された体には、機械的な装置が無数に組み込まれており、人工的に強化された筋肉と骨がその体を支えていた。だが、その瞳は、生気を感じさせることなく、ただ無機的にミヤザキを見つめていた。
突然、後ろから物音がした。ミヤザキは反射的に身を屈め、隠れる場所を探し始めた。数秒後、足音が近づいてきた。何者かがこの施設に足を踏み入れたのだ。
「誰だ?」
声が響く。ミヤザキは静かに、次の行動を選ばなければならなかった。
次回へ続く――
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