流浪のスナイパー

第6話

　第8章 - 香川の影

　福岡での潜入捜査を終えたミヤザキは、手にした情報を基に次なる目的地を香川に定めた。ウクライナの秘密兵器に関するデータの中には、香川にある小さな研究所の名前が記載されていた。どうやら、その研究所が坂東の陰謀の鍵を握っているようだ。

　香川は、穏やかな風景と静かな街並みで知られる地方都市だが、その裏ではさまざまな秘密が隠されている。地元の製薬会社や技術開発企業が集まり、独自の研究を行っている場所としても知られているが、ミヤザキが求めていたのは、そこに隠された本当の目的だった。

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　香川に到着した夜、ミヤザキはすぐに目的の研究所へと向かった。

　この研究所は、見た目にはごく普通の建物に見えるが、セキュリティが異常に厳しく、外部からのアクセスはほとんど不可能なようになっていた。周囲にはいくつかの民間企業や大学の研究施設も点在しているため、目立たないように慎重に行動する必要があった。

　ミヤザキは、香川の静かな町並みの中で一晩を過ごすことに決め、昼間に得た情報をもとに周辺を観察することにした。地元のカフェに入り、持ち歩いていたノートPCを開くと、研究所の内部構造を探るための情報を収集する。その中で、気になる報告書を見つけた。

「坂東はここに何を求めているのか…」

　その報告書には、ウクライナの兵器と関連する技術開発が行われていることが記載されており、さらにそれを進めるための資金が「香川の研究所から流れている」という情報があった。これは単なる開発ではなく、兵器としての実用化を狙った研究が行われている可能性が高い。

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　その夜、ミヤザキは研究所周辺をさらに調査し、警備体制を把握した。香川の町の中で最も警戒されている場所だが、それでも隙間は必ずある。彼は、夜遅くに警備員が一時的に交代するタイミングを見計らい、再び隠密行動を開始した。

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　深夜1時、ミヤザキは研究所の裏口に到達した。

　彼は、周囲の音に注意を払いながら慎重に進み、壁に隠れていた。ほんのわずかな隙間から内部を覗き込み、警備員の動きを確認する。ドアの施錠を解除するためのツールを取り出し、数秒でドアを開ける。

　中に入ると、ひんやりとした空気が迎えてくれる。歩く音を立てずに進み、最も重要な情報が保管されているであろうサーバールームへと向かった。だが、途中で何度か不穏な気配を感じる。誰かが近づいている足音が響くが、すぐに隠れて身を潜めることに成功した。

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　サーバールームに到達するまでの道のりは、予想以上に静かだった。

　部屋に入ると、白い壁に囲まれた無機質な空間が広がっており、並んだサーバーのランプが青白く光を放っていた。ミヤザキは周囲を一瞥し、すぐに作業を開始する。

　彼はパソコンの端末を立ち上げ、迅速にセキュリティシステムを突破する。まもなく、ウクライナの兵器に関する最新のデータを発見する。しかし、そのデータが思わぬ事実を明らかにした。坂東が追い求めている兵器の核心は、ただの兵器ではなく、新たなテクノロジーの進化形――人体改造に関する研究が含まれていたのだ。

「これは…」

　ミヤザキの心に強い不安がよぎる。ウクライナの秘密兵器とされるその技術が、単なる破壊力を超えた兵器であることを意味していた。坂東の目的は、兵器による支配ではなく、人間そのものを操る力を得ることにある。

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　その時、突如として背後から警告音が鳴り響いた。ミヤザキは反射的に背後を振り向き、すぐに状況を把握する。研究所内のセキュリティが作動したのだ。ミヤザキは急いでデータを持ち出し、隠し通路から脱出を試みる。

　だが、すでに研究所内は厳重な封鎖が施されており、逃げ道を見つけるのが難しくなっていた。ミヤザキは冷静に周囲を見渡し、唯一の出口となる非常口に向かって駆け足で進んだ。セキュリティが迫る中、彼は一瞬の隙を見計らって脱出した。

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　その夜、香川の静かな町並みの中で、ミヤザキは不安な思いを抱えていた。

　手に入れた情報をまとめると、坂東の陰謀はただの兵器開発ではなく、まさに「人間兵器」を作り出すための実験にまで発展していた。ウクライナ、そして香川、さらには世界中の影で動いている勢力が、この計画を進めているのだ。

　ミヤザキは、次の行動を決めるために心を決める。もう一つ、どうしても解明しなければならないことがある。それは、坂東の背後にいる「新たな支配者」が誰なのか――そして、その支配者が何を目指しているのかを突き止めなければならなかった。

　彼の戦いは、ますます深く、そして複雑になっていく。

次回へ続く――