第25話 ゴールデンウィーク明け

 ゴールデンウィークが終わり、賑わいの戻った学校で授業が再開した。私はあめをせめて教室まで連れていけないかと未琉に相談し、寮内で共にあめを探した。しかしどこを探しても姿が見当たらず、あめの部屋ももぬけの殻だった。


「鍵もかけずに出ていくの、不用心すぎない?」


『もしかしたら、鍵をかけても意味が無いと思っているタイプなのかも。鍵くらい魔法で開けられるから』


「ああ……」


 仕方がないのであめを探すのは諦めて二人で校舎へと向かった。


 教室に入ると、意外なことに制服姿の彗がいた。イライラした様子で腕組みをしながら座っている。


「おはよう、彗さん。珍しいね。体育があるわけでもないのにいるなんて」


『おはよう』


 私達が声をかけると、きっとした表情で私を睨みつけた。


「おはようございます、舞理さんに未琉さん。まったく、どれだけわたくしを待たせる気ですか」


「え、えぇ……。そうは言われても……」


「おいーっす。お、ちゃんと龍神も来てるな~。偉いぞ~」


「あ、先生。おはようございます」


 彗の態度に困惑していると、栗枝先生も教室に入ってきた。口振りからして彗が来ている理由を知っているらしい先生は、満足そうに笑顔を浮かべている。反対に彗は不満そうに頬を膨らませた。


「先生、当の本人には何も説明していないのですか? わたくしには呆れるほど念押ししていらっしゃったのに」


「だってお前はそうでもしねぇと来ねぇだろ? んで、根音は言わなくても学校に来るんだから、今ここで話せば何の問題もない」


「あの~、何の話ですか……?」


 何やら私のあずかり知らぬところで私に関する話し合いが行われていたっぽいことは判明した。が、その内容が何なのかわからない。嬉しいお知らせでないことはなんとなくわかる。それは彗の表情からも明らかだ。


「ああ、お前の厄介な……じゃなくて、特化してる魔法。あれを使いこなせるようになるには、協力者が必要だろ? 私が相手してやってもいいんだが、試験に教師が参加したら意味ねぇからな。だったら共に試験を受ける、同じクラスの生徒がじっけ……協力者になるのが一番いい。っつーわけで龍神を連れて来た」


「わたくしを実験台扱いしないでください!」


 にこやかな笑みを崩さない先生に、彗が顔を赤くしながら反抗した。あの魔法、相当な嫌われものなんだなぁ……。


「それに、相手ならわたくしでなくても、未琉さんだって……って、いない⁉」


「え⁉ いつの間に⁉」


 私と共に来ていたはずの未琉の姿が忽然と消えていた。


薬袋みないなら少し前に出てったぞ」


「そんな⁉」


 平然と言う先生に、驚愕する彗。そして勝手にいなくなった未琉。この状況に、私はただ自嘲気味に笑うしかなかった。


(特化型の問題児って、こういうことかぁ……)

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