第23話 覚醒マリオネット

「はぁ……やっと、着いた……はあああああああ」


〝その割には嬉しくなさそうな溜息つくじゃない〟


「だぁって疲れたしぃ、全身ずぶ濡れで巫女服が身体にへばりついてるしぃ、疲れたしぃ、あと……疲れ……へっくし」


〝はいはい、お疲れ様〟


 私達はようやく出口と思しき行き止まりに辿り着いた。水かさはもう腰まで来ている。途中から彗を引っ張るのも楽ではなくなってきた。水の抵抗もあるし、もし彗が溺れてしまったら、と思うと気が気ではなかった。身体も脳も酷使したせいでへとへとだ。これが終わったらお腹いっぱい甘いものを食べたい。


「ああ、苺パフェこわい」


〝……何で急にパフェなんか怖がってるの?〟


「え? そういう意味じゃなくて、まんじゅうこわいの〝こわい〟だよ。ほら、落語の」


〝何それ。一般社会の流行りか何か?〟


「流行り……ってほどのものでもない、かな。魔法界の人達って落語知らないの?」


〝少なくともわたしは知らないわね。長くこの地にはいるけど、だからって人間の文化に精通しているわけでもないのよ。妖精だもの〟


「そっか。じゃあ、後で皆に落語知ってるか聞いてみよう」


〝簡単に言うけど、ここから出られなきゃ意味ないわよ〟


「わかってる」


 私はごつごつとした岩壁に手を触れた。他の部分は淡い光のような輪郭が見えるだけだが、ここだけは違う。輪郭がはっきりとしている。


「今更なんだけど、何て言うか、その……この視界って、何?」


〝本当に今更ねぇ。あなたが今見ているものは、魔力よ。この洞窟……と言うよりも、この山全体のありとあらゆるものには魔力が宿っているの。だから魔力さえ見ることができれば、こんな暗い洞窟の中でもどこに障害物があるのかがわかるってわけ〟


「そうなんだ。これが、魔力……」


 ものによって見え方に違いがあるのは、魔力の強さの違い、ということだろうか。


〝あら、察しが良いわね。この岩にこれだけの魔力が宿っている、ということは、魔法で塞がれているってわけ。これを壊せば出られるわ〟


「うん」


 私は目を閉じ、無駄な考えを切り捨てるように息を吐いた。岩壁から手を離し、決意を新たにしてそれを睨みつけた。絶対にこれを壊して、ここから出てやるんだ。


「ごめんね、彗さん」


 意識がないから聴こえていないだろうが、先に謝罪だけしておいた。そうでもしないと後味が悪い。


 彗を縛り付けている蔓を一旦解き、水中に沈む前に素早く両腕だけに蔓を巻き付けた。そうイメージすれば蔓が勝手に枝分かれして動くものだから驚いた。本当に魔法はなんでもありだ。


 私が前にいても危ないだけなので、彗と場所を入れ替わった。十字架にでも磔にされたように両腕を真横に伸ばし、頭をがっくりと下げた状態で移動する彗の姿は異様としか言えず、己のやろうとしていることの恐ろしさを垣間見た気がした。


(確かにこれじゃあ、特化型の問題児だなんて言われても文句言えないよなぁ)


 もし知らない誰かがこの能力を持っているとしたら、私はその人に近づきたいとは思わないだろう。私に秘められていた魔法の才能は、そういう類いのものだった。


〝くすくす。でも、あなたはその魔法を使わないと、ここから出られない。あの学校に三年間居続けることはできない。ああ、生まれ持った才能って残酷ねぇ。自分で選ぶことができないんだから!〟


「……何でそんなに嬉しそうなの」


〝不器用な子を見ているのって、たまらなく楽しいんだもの!〟


「いい趣味をお持ちですこと」


 私はもう一度息を吐いて、頭を振った。妖精に構っている場合ではない。今やるべきことに集中しなければ。


 彗越しに岩壁を睨みつけながら、水の塊を放っていた彗の姿を思い返した。あれと同じことを、彗に無理矢理やらせる。意識のない彗に。


「水の塊を、岩壁に、放つ。弾丸みたいに、素早く、鋭く、岩壁を砕く」


 蔓をぎゅっと握りしめながら、何度も何度もこれから成すことをイメージした。本当にそうなるんだ、と信じる――いや、それが当たり前なのだと自分に思い込ませるために。


「いくよ、彗さん。――水の弾丸で、岩壁を壊して」


 彗が両腕を前に突き出した。すると水の塊が一つ、浮かび上がった。その塊はゆるゆると前進し、岩壁に当たるとぱしゃりと音を立てて崩れた。


「……駄目じゃん⁉」


〝あっははははははははは‼ なぁにそれ‼ ダッサ‼〟


 妖精がひいひい言いながら笑い出した。


「ちょっと⁉ 何これ⁉ ええ⁉ 何で⁉」


 さっきまでの真剣さを返して⁉


〝くすくすくすくす。真剣に物事を考えればできるようになる、ってものでもないよのぉ。残念だったわねぇ〟


「何それぇ⁉ クソッ……さっきまでの私が滅茶苦茶馬鹿みたいじゃん! ああもう! もっと! もっと強くできないの⁉」


 バコンッ‼


「……え?」


 がらがら、と岩が崩れ落ちた。出口を塞いでいる岩の一部が。


「え、え」


 何が起きたの、今。


〝あらぁ。勢いつければできるじゃなぁい〟


「え。何それ。そういうものなの? 私のテンションが影響してるとか、そういうアレ? いちいち技名叫ばないといけないみたいなそういうアレ⁉」


〝くすくす。あなたはまだ魔法の世界に身を置いて日が浅いから、そのくらいしないと使えないのかもねぇ〟


「何それぇ⁉ ああ、でも文句言っててもどうにもならないから……ええいままよ! 叫ばないと駄目って言うなら叫んでやらぁ!」


 こうなったらもう自棄だ!


ぇっ!」


 ズゴンッ‼ ガラガラッ‼


「よし! これでいける! 彗さん! もっと強く! いっぱい! 撃て撃て撃てッ!」


 操られた彗が幾つもの水の弾を撃つ。その度に岩壁が音を立てて崩れ落ちる。しかしまだ日の光は見えない。


「そうだ、一ヶ所だけ狙い続ければ……。よし、一点集中……いっけええええええ‼」


 無作為に弾を当てるのではなく、一点のみ狙い続ければ、石に窪みを作る水滴のように穴を開けられる!


 絶対に、開けてやるんだ‼


 操られた彗が何度も眼前に水の弾丸を放つ。その度に、徐々に岩が深く削られていく。しかし……。


「もっと……はぁ……もっと、撃って……はぁ」


(引っ張った時の比じゃないくらい……疲れる!)


 弾丸が放たれるたびに、私の体力も削れていく。魔法、体力勝負すぎないか⁉


(そりゃあ体力強化のために体育の授業強制参加させられるわけだよ……!)


〝あと少しの辛抱よ! 耐えなさい!〟


「そうは言っても……あうっ……」


 眩暈がしてふらりとよろけた。するとそれに呼応するかのように、彗の弾丸も軌道が逸れた。


(もう……無理……)


 頭はパンク寸前だし、鼻水が垂れていると思ったら鉄の味がした。このまま続けていたら、穴を開ける前に溺死しかねない。


(魔法って……魔法の世界って……こんなに厳しいものなの……⁉)


 フィクションの魔法の世界は、フィクションだから現実には起こりえないもの、自分が同じ状況にはならないものだ。だから主人公がどれだけ辛い境遇に立たされようがそれを楽しんでいた。それなのにまさか、自分も同じように辛い目に遭う時が来るなんて!


(あと少し、なのに……)


 ここまで来たんだ。諦めたくない。


 辛い。もう休みたい。


 そんな弱気じゃ駄目だ。魔法使いになりたいんだ。


 無理だ。憧れてきたような魔法使いになんてなれやしない。


 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。


「もう……いや……」


 こんな暗い洞窟の中に取り残されて、こんなにずぶ濡れになって、惨めな思いをして、こんなに頑張ったのに、壁は立ち塞がったままで……。何が魔法だ。何がファンタジーだ。こんなのただの、嫌というほど味わった現実じゃないか。


 ぽたりと雫が落ちる音がした。ぽたり、ぽたりと何度も落ちる。


〝舞理、だいじょ――〟


 ドガンッ‼


〝……え〟


「なに……今の……」


 何もしてないのに岩壁の崩れる音がした。


〝今の、あなたじゃない……わよね?〟


「う、ん……何で、今……」


「わたくしがやりましたが、何か?」


「え?」


 声に釣られて顔を上げてみれば、憤慨した様子の彗が目の前にいた。


「まったく、泣いている場合ですか。散々人をこき使っておいて……。泣きたいのはわたくしの方です。こんな、真っ暗闇ですし……」


「あ……彗さん……彗さああああん!」


「うわぁっ⁉ ちょっと⁉ いきなり抱き付かないでください!」


 彗は私を引き剥がそうとしたが、私は構わずに彗にしがみついて泣き続けた。


「うっ……ご、ごめんね、彗さん。勝手に操って、それなのに出られなくって」


「ふん。謝る必要がどこにあると言うのですか。舞理さんは舞理さんのできることをしたまででしょう」


 予想外の反応に、私は少々頭を混乱させた。


「え……? お、怒って、ないの……?」


「怒っています。できないからと、諦めようとするあなたに。この真っ暗闇な状態に!」


(あ……)


 その言葉で気がついた。彗の身体が震えていることに。この洞窟内で会った時に、暗闇が苦手だと言っていた。暗闇の中に取り残されることを、彼女も怖がっているのだ。


「自分の目的のために他人を利用することを咎めはしません。わたくしも、他人を利用することはありますから。……ですが、利用しておいて〝やっぱりできませんでした〟となるのは、腹が立ちます。中途半端は嫌いです」


「う……ごめんなさい」


 彗の言葉がぐさりぐさりと突き刺さる。穴があったら入りたいが、生憎ここが穴の中だ。


「ほら、いつまで泣いているつもりですか。さっさと終わらせなさい」


「うん……でも、私、もう……いっっったぁ⁉」


 いきなり彗が頭突きしてきた。たんこぶができそうな程痛い。


「魔力が枯渇したとかふざけたことでも言う気ですか! この場にこんなにも魔力があるというのに! 利用できるものは何でも利用しなさい! 人の身体だろうが、自然に宿る魔力だろうが!」


「自然の……魔力」


 私ははっとして辺りを見回した。この洞窟内のありとあらゆるものには魔力が宿っている。それも、利用することができるのか!


「消費した分の魔力は時間が経てば回復しますが、もっと手っ取り早く回復させる方法があります。自然に宿っている魔力を吸い取るのです。とは言え宿っている魔力量はまちまちですし、吸い取れる量はせいぜいが魔法一回分、といったところでしょう」


「なるほど。それで、どうやって魔力を吸い取ればいいの?」


「魔力の宿っているものに手を触れて、魔力を同調させれば……ああ、でもあなたの場合は違うかもしれませんね。舞理さん、わたくしをどうやって操ったのですか?」


「え、えっと……蔓でぐるぐる巻きにして、こういうことをしてほしいって命令して……」


(うわぁこれ本人の目の前で言うの気まずい)


 しかし彗は気にした様子もなく、少し考える素振りを見せてからこう言った。


「では、もしかしたら同じ方法でできるかもしれませんね。悠長に魔力の同調の仕方を教えている暇もありませんし」


「あ、じゃあ岩に蔓を這わせて魔力を吸い取りながら岩を壊して……いや。待って。吸い取らなくても、落ちた瓦礫をぶつけていけば、いけるかも! 私、やってみるよ彗さん!」


「ええ、その調子です!」


 この時初めて彗が力強い笑みを見せた。それに釣られて私も唇の端を上げた。


 ああ、魔法って、面白い!


 自然のものに宿る魔力を、それに手を触れることで利用することができるなら、蔓を通じて操ることだってできるはずだ。そのものの魔力を利用すれば、こちらが使用する魔力を必要最小限に抑えることもできるかもしれない。使用した瓦礫の魔力が無くなっても、幸運にも魔力の宿った瓦礫は沢山ある。使い切る前に決着をつけよう。


(さっきまでの私は、無駄に魔力を浪費してたのかも)


 あんなにも疲れていたのは、体力の無さだけが原因ではなかったのかもしれない。ゲームとは違い、自分のマジックポイントの上限も必要なポイント数もわからない。だからこそ、本来必要とする魔力の倍以上使っていた、という可能性もある。


 私はまた魔法を使うことに集中した。今度こそ、あの岩壁を壊す。もうあと少しだ。


 蔓を握り直し、イメージした。蔓が砕けた岩を持ち上げ、岩壁にぶつける様を。


「……!」


 ごつん、ごつん。ゆっくりとだが、二手に分かれた蔓がそれぞれに瓦礫を掴んで投げ始めた。


「よし……!」


「その調子です!」


 蔓が掴んだ瓦礫は、掴まれた途端に光を――魔力を失っている。これは上手く魔力を利用できている証拠と考えていいだろう。私自身も疲労感が少ない。


 しかし、壁は崩れていない。


(威力が弱すぎる? 手当たり次第に投げるんじゃなくて、大きめの瓦礫をぶつけた方がいい?)


 そう考えるが早いか、蔓が勝手に大きい瓦礫を探し出した。これを投げれば……。


〝くすくす。あなた、忘れてるんじゃなぁい?〟


「え? な、何を?」


 投げようとしたところで妖精が声を挟んできた。私がそちらを向くと、視界の端で瓦礫も向きを変えていた。


〝だ・か・らぁ。勢いをつけたいんでしょ? あなたも勢いをつければいいじゃなぁい〟


「……人のいる前でやれと?」


 あの時は彗が気を失っていたからいいものの、今はがっつり見られているんですが?


〝くすくす。恥じらっている場合じゃないでしょ。ここから出なきゃいけないんだもの〟


「うう……わかったよ」


 横目で彗を見ると、何の話をしているのかわからない、といった様に顔をしかめている。しかし背に腹は代えられない。私は観念して深呼吸した。


「いっけええええええええええええええええええええええ‼」


「⁉」


 私が思いっきり叫ぶと、呼応して蔓も思いっきり瓦礫を投げた。


 ガンッ!


「よし! もういっちょ! 放てぇ!」


 叫んだ勢いに合わせて蔓が瓦礫を投げ、岩壁は少しずつ砕けていく。


「ど、どうしたのですか急に⁉」


「ああ、これは、その……私が勢いをつけないと、操られる側も勢いがつかないみたいで」


「それであんなに疲れ果てていたんですね⁉」


「まあ、それもある。……いけえええ! 撃てえええ!」


「……な、なんて燃費の悪さ」


〝くすくす。面白いわよねぇ、この子〟


 横で彗が呆れ果て、妖精が面白がっていたが、構わず私は叫び続け、瓦礫を投げさせ続けた。


 そして遂に――。


「うわっ! 眩しっ!」


 光が、日の光が見えた。


「……! これで、やっと出られる! よぉし、最後の、渾身の一撃……ぇっ!」


 放たれた弾丸が壁に大きな穴を開け、ガラガラと大きな音を立てて崩れ落ちる。もう腰の高さまで来ていた水位もどんどん低くなっていく。外と繋がり、水が流れ出ているのだ。


「やった……やったよ彗さん! 妖精さん!」


「ええ、やりましたね! よく頑張りました!」


〝やるじゃない、舞理!〟


 初めて魔法の辛さを味わった。それと同時に、初めて魔法の可能性も味わった。諦めずに別の方法を探せば、困難を、壁を乗り越えることができるのだ。


「二人共ありがとう! 私一人だったら、もう……うっ、ぐす……うえぇ」


「また泣いているのですか。まったく。物事を成し遂げたというのに、情けないですよ」


〝この子はあなたと違って四六時中神経張り詰めさせてるわけじゃないんだから、今くらい泣いたっていいでしょ。くすくす。あなただって、本当は怖くて泣きたかったんじゃないのぉ?〟


「う、うるさいですね……。ほら、早く外に出ましょう」


「うん、そだね……ぐすっ」


 彗に背中を押され、ゆっくりと歩きながら私達は洞窟の外に出た。数時間振りに浴びる太陽の光。いつの間にか天辺近くまで昇っていたそれは、とても眩しく見えた。ああ、光ってこんなに暖かいんだ。


「おお~い! 二人共無事か~?」


「うわっ。ずぶ濡れだなおい。何があったんだよ」


『酷い顔』


「あ……! 皆、こんなところに……!」


 洞窟の外には、栗枝先生、あめ、未琉、そしてアマノさんの四人が待っていた。


「あ~っはっはっは! 無事で何より。舞理も己の力の使い方を体得したようだの。結構結構。くく。水に濡れた二人の乙女が寄り添い合う姿もいのぅ。しかも二人共巫女服だしのぅ」


「あ……アマ、ノ……っ」


 アマノさんの姿を見て彗も緊張が解れたのか、一筋の涙を流した。そして私を支えていた手を離し、早足でアマノさんに向かっていく。


「おお、彗や。わしに会えてそんなに嬉しいか。わしも嬉し——」


「こぉんのクソオオバカガミがああああ‼」


「えええええええええ⁉」


「あふっ⁉」


 彗がアマノさんの股間を蹴り上げ、ダメージを喰らった格闘ゲームのキャラクターの如くアマノさんが吹っ飛んだ。そして追い打ちとばかりに大量の水がアマノさんを襲う。


「はぁ……はぁ……今度また同じようなことをしたら……刎ねてやりますからねアマノクソオオバカタツカミ……」


「うう……〝何を〟と言わないあたりが怖い……しくしく」


 あれだけの攻撃を喰らっておいて嘘泣きする余裕のあるアマノさんも、それはそれで怖いんですが。


 しかし次の瞬間にはケロリとした顔でアマノさんは立ち上がり、私に歩み寄ってこう言った。


「ご苦労だったの、根音舞理。これで多少はまともに魔法が使えるようになったであろう」


「えーっと、そうだといいんですけど……。でも……」


「不安かの? 己のその特性が」


「……はい。だって、人を操り人形みたいに扱う魔法が得意だなんて言われても、いい気はしませんし」


「ふむ。割と普通の感性を持っているのだの。だがそう思い悩むのも今だけだ。じきに慣れる。だがまあ気になると言うのであれば、上手い使い方を考えるがよかろう。この試練を乗り越えたおぬしだ。必ずよい方法が見つかる」


「そう、ですかね……」


「ああ、そうだとも。おぬしの力は一人で完結するものではない。彗や、他の二人と共に、協力して力の使い方を学ぶがよかろう」


「……はい。頑張ります」


「うむ。ほれ、皆の衆! 腹が減ったであろう! 皆で美味い飯を食べるぞ!」


「おお! やっと飯か! さっきからずっと腹減ってたんだよなぁ」


『お疲れ様。早く戻ってご飯、の前に、着替えた方がいいよ。その格好じゃ風邪引く』


「うん。実はさっきからちょっと寒気が……っくし」


「シャワーも浴びた方がいいかもな。龍神、飯の前に根音を連れて風呂場にでも行ってこい。ああ、でも火野屋が全部食っちまう前に来いよ」


「かしこまりました」


「わしも濡れてしまったから共に入ろぐふっ!」


〝懲りないわねぇ……〟


 こうして無事試験を合格した私は、温かいお風呂に入って元の服装に着替え、美味しい料理をお腹いっぱい食べたのでした。


(……苺パフェ、食べたかったなぁ)

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