第13話  やべえやつだ・・・・ ★

主人公たち以外の人目線の話がはいる回では、タイトルに★をつける予定です。



____________________________________________________________________







俺の名前は牧田広、32歳。

迷宮大氾濫の時に失職し、運良く魔力に覚醒した俺は、混迷を極める社会の中、当時新たに作られた特殊狩猟免許制度、俗に言うハンター資格を取得し、同じく魔力持ちだった幼なじみの3人と一緒にパーティーを組み、ダンジョン内やそこから溢れたモンスターを狩る"ハンター"として活動してきた。


仕事中は常に生死と隣り合わせという危険な職業だが、やりようによっては会社勤めをしていた頃よりもずっと稼げるし、仲間と一緒に依頼を達成した時は達成感があるし、ダンジョンという正しく未知の世界を探索するのはロマンがある。


日々の努力と、筋が良かったのもあってか、ハンター達の中でもそこそこの上澄みである自信はある。

真面目に活動してきたのもあって、最近、ギルドで新たに制定されたランク制度でもAランクの判定をもらっている。


だが、今回の依頼を受けたのは失敗だった。


五年前、最初で、最凶の迷宮氾濫が発生し、以後立ち寄るのを禁止され完全に放棄された土地、北海道の現地調査。


ドローン撮影によるデータなどは事前に見せてもらっていたし、決して油断していたつもりは無かった。


だが、ここまで過酷だとは・・・・!


これでは高いと思っていた報酬も割に合わん・・・・。









「おーい、リーダー。マッキー。大丈夫か?」


「ぷはっ、うお、痛ってえ・・・・・。」



仲間の呼び声で、意識が覚醒する。


蟻の足に顔面衝突した、リーダーこと牧田広は頭をさすりながら考える。


(何だ、あの強さは・・・!)


足が飛来してきて衝突する数瞬前、視界の端で僅かに捉えた一瞬の光景を思い返す。


(一撃であのキングアントの足を切り落とすだと!?自衛隊が一個師団の全滅と引き代えにギリギリで殺したS級モンスターだぞ!?そんなことできるハンター聞いたことがねえ・・・・。)



わかることは、自分達が助けられたこと。そして、相手が絶対に喧嘩を売ってはいけないタイプの人間だということだけだ。


リーダーである牧田がそうこう考えているうちに、謎の二人組は近づいてくる。



こんな場所に居るには、違和感を感じるというか、珍妙な二人だった。



落ち着いた雰囲気を持つ黒髪黒目の典型的な日本人顔のと、銀髪紅眼という現実ではコスプレイヤー以外で見たことがないような色調の華奢な若い美女。

感じられる魔力も、そこまで多くはない。


およそ荒事とは無縁の容姿だ。


しかし、感じられるプレッシャーの重みが違いすぎるッ。

見れば仲間も取り繕ってはいるが、顔を青くし指先が震えている。


少なくとも、ギルドの青森支部の中ではトップクラスの強さを自負している俺たちが、

気圧されている。


特に銀髪の方。

理由は解らないが怖気が止まらねえ!


整いすぎた容姿も含め、生物としての格の違いのようなものを感じる。


男の方は、ありゃ銃か?

遠距離武器はモンスター相手に著しく威力が落ちるんじゃねえのかよ・・・!


何だ、何なんだコイツら・・・。




「あ〜、ハロー。イッズナイスウェザー・・・」


「いや、普通に話しかけて下さいよ。私の時は普通に会話出来てたじゃ無いですか。」


「あの時は色々衝撃すぎて吹っ切れてたんだって・・・。」



二人のくだらない会話で、現実に引き戻される。

気づくと、二人は従魔(?)から降り、すぐ近くまで来ていた。


(いかんいかん。相手は命の恩人だ。まずは礼だ・・・)



「た、助けて頂きありがとうございました。」


「いいよ、別に大したことしてないし。」


「キングアントを追っ払う事が大したことないわけないですよ。あなた方がいなければ、今頃私達はミンチになっていたでしょう。」


二人の装備を見る。


男の方は濃緑のマントの下に革鎧を着こみ背にはリュックサック型の革鞄を身に付けている。背負っているライフルと腕時計を除けば、ファンタジー世界の旅人といった趣だ。

女の方は、漆黒のマントを身に付け、その下の服も黒一色。およそ背丈に合ってない大きなハルバードも相まって死神のようだ。



そして、許可証を、


俺たちももちろん付けている、蛍光オレンジの腕章。


中には特殊狩猟免許、つまり武器を保持し、ハンター活動をするための許可証が入っている。

武装中はいかなる時でもこれを外してはならない。



それを身に着けていないのは、自衛隊の特戦群、あるいは、犯罪者。







「・・・・し、失礼ですが、自衛隊のぉ方でしょうか?」


「え、違うけど。」










ハンター達は察する。



(((・・・・・あっ、コイツやべぇやつだ。)))
















__________________________________________________________________________

前話に牧田の容姿に関する内容を追加しました。

私の執筆活動において初の主人公外のネームドキャラの容姿は、スキンヘッドand片目に眼帯です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る