第5話『医務室で』+Log:1

 不安と考えることばかりで眠れる訳が無い、と思った朝は驚くほどすっきりとやってきた。

 レヴィに用意された部屋の居心地が良すぎて、しっかり熟睡してしまったらしい。


 リビングらしき部屋に向かうと、朝からレヴィが何処かと通信していた。

 こちらに気付き、片手を上げる。

 上げた手と尻尾が連動するかのようにぴんと持ち上がったのは、多分無意識なんだろうな。


 何処かとの通信を切り上げ、レヴィがぽつんと入り口でたたずんでいるメモリの傍に来る。

 寝間着のままだったメモリに、着替えを渡す。


「ソータさんとシビルさん、早朝から医務室に居るみたいなので、そちらに向かいましょう」


「あの、これは……?」


 目の前に出されたのは、こんがり焼けたパンケーキに山盛りのクリームとバター。


「朝ご飯」


「なんでこんな可愛いもの出すの?」


 いまいち意味が分からないように、レヴィが首を傾げる。

 どうやら毎日、レヴィ自身はこれを食べているらしい。朝に。いや普通に胸焼けするって。


「アサハさんの食事みたいなの出せとか言うんですか? 僕には無理です。パンしか焼けません。メモリさんの朝の食事事情は?」


 一口分、自分に出されたパンケーキを口に入れる。

(? なんか、風味が……猫用、とかじゃないよな?)

 ちょっと違和感がある。レヴィは美味しそうに食べているから、これが普通の味付けなんだろう。


「……朝は栄養剤バー食ってた。って言ってもここには無いだろうし。出してくれたものは、ちゃんと食います」


 栄養剤バーと言った時点で信じられない、という顔をされた。尻尾も少し膨らんでいる。そんなに?

 レヴィの味覚的には、最悪なものなのかもしれない。


「それより。ソータさんが医務室って、なんか大怪我したんですか?」


 レヴィの耳がしょげ、と下がる。


「マサキくんの方みたいです。夜に突発の暴れ水流が発生したみたいで。ちょっと何か、事故があったっぽいですね」


「それは、やっぱ、昨日の件……で?」


「いえ、水流は別件でしょう。どちらにしろ、これから医務室に行きたいんですが……構いませんか?」


 自分もついていっていい、ということだろうか。

 急ぎ朝食を摂って身支度を調え、入り口で待つレヴィと合流する。

 レヴィが怒られるようなことがあるとすれば、それは自分の責任だ、とメモリは意気込む。どうなるかは分からないけど、ちゃんと責任は被らないと、と覚悟を決めた。



 医務室のベッドの背を立て、座った状態のマサキをシビルとソータさんが囲んでいる。

 全身打撲ながら、幸い内臓の損傷にまでは至らず。

 最も酷い怪我はあばらの骨折だったが、ここでは2日もあれば完治するだろう、とのことだった。


 部屋に入る前からソータさんの「お前な、デバフにばっか頼って遠距離狙うからだよ。もっと身体を動かせって何度言えば」というマサキへのお説教が響いて来ていた。

 レヴィたちが入った瞬間、こちらを鋭い眼差しで確認してくる。


「──よお。来るの遅いぞ、レヴィ」


「すみません。あの、マサキさんは?」


 レヴィの問いにマサキは顔を背けたまま、答える。


「理論が、乱れただけです」


 ソータさんが何か言おうとするも、直ぐ横のシビルに止められた。


「まあまあ、マサキくんも痛い目に遭って学んでるよ。私たちも昔はこうだったじゃない?」


 苦々しい顔でソータさんが黙り込む。けどな、と言いかけマサキを見、矛先をシビルに変えた。

 

「今だから言うけどな、お前の実験だって結構危なっかしいだろ。実戦じゃ理屈通りには──」


「それを極力減らすのが、理論です」


 あばら折った状態でこの人に噛み付いていく根性は凄い。

 レヴィがああ、と片手で顔を覆う。

 一瞬虚を突かれたような顔をしたソータさんが、ため息をついて膝を叩いた。


「お前ほんと俺の言ってること、聞かねえよな……」


「無視はしていません」


「聞こえてもそのまま左から右に流して終わってんだよ。意味を受け取って検討しろっつってんだ」


 意外そうにマサキがソータさんを見る。


「検討はしてますよ」


 うん、検討した上でその意見は採用しないって、外から見たら無視になってるんだよな、分かる分かる。

 いや外からは全然分かんないって。

 

「大丈夫ですか、マサキくん? かなり痛いでしょう、肋骨は」


 ソータが怒る前に、レヴィが間に割って入った。


「いえ、全然。これ位の痛みなら」


 その事にメモリが引っかかる。

 怪我? ここは、全てゲームだから安全なんじゃなかったのか?


 昨夜も、レヴィは苦しんで居るように見えた。

 急に不安になってレヴィを見るメモリに、ソータさんが静かに声を掛ける。


「一般プレイヤーと俺たちとは、根本的に使っているシステムが違うんだ」


 詳しく聞こうとしたタイミングで、次々と別の人物が部屋に入ってくる。シノンと、アサハだ。


「マサキくーん? 大丈夫ー?」


「あら、こんにちは……? レヴィ? レヴィも大丈夫なの?」


「おっと。人数が増えてきたね。医務室であんまり長話するものじゃない。レヴィくんと、メモリくん。──二人とも、私のラボにおいで」


 質問攻めにされかけたレヴィを、ソータさんに目配せされたシビルが連れ出す。

 必然、一緒にメモリも席を立った。マサキだけが「いえ、別に構いませんが、俺は……」とメモリとレヴィの背に声をかける。

 

 レヴィが振り返り「早く治るといいですね、マサキさん。またのちほど」と返した。

 メモリも手を上げて、辞去の意を伝える。マサキは少しだけ、置いて行かれた犬みたいな顔をしていた。






新GM雑談スレpart14


1 :名無しさん@コグニスフィア:

新GMについて語るスレ

※荒らし・誹謗中傷は運営に通報

※前スレ →part13が950で落ちたので立てました


2 :名無しさん@コグニスフィア:

マサキ怪我したってマジ?


3 :名無しさん@コグニスフィア:

>>2

水流バトルで事故った模様

医務室に運ばれたの見た


4 :名無しさん@コグニスフィア:

理論派のマサキが事故るとか

ソータに怒られてそう


5 :名無しさん@コグニスフィア:

マサキ君の理論バトル好きだったのに…あのミスはww

本人も呆然としてたよなあれ


6 :名無しさん@コグニスフィア:

レヴィの件

なんか不穏な噂流れてるけど


7 :名無しさん@コグニスフィア:

>>6

詳細


8 :名無しさん@コグニスフィア:

>>6

いやそれガセだから

デマ流すなよ


9 :名無しさん@コグニスフィア:

新GMランキング(個人調べ)

かっこよさ:ソータ>マサキ>レヴィ>アサハ>シノン

実力:ソータ≧マサキ>アサハ>レヴィ>シノン

かわいさ:シノン>レヴィ>アサハ>マサキ>ソータ

カリスマ性:ソータ>シノン>レヴィ>マサキ>アサハ


10 :名無しさん@コグニスフィア:

>>9

アサハ過小評価すぎ


11 :名無しさん@コグニスフィア:

シノンちゃんの読み聞かせ配信、子供に大人気らしいな

こういうの大事だと思う


12 :名無しさん@コグニスフィア:

テーブルゲームでレヴィに勝てる奴いんの?

めっちゃ強くね?


13 :名無しさん@コグニスフィア:

>>12

ブラフ多用するよな

かわいいからって油断するとぼろ負けする


14 :名無しさん@コグニスフィア:

容赦なくズタボロにされるぞ

舐めてる奴にはガチで容赦ない。笑顔のままだから全然気付けない。


15 :名無しさん@コグニスフィア:

>>14 耳尻尾があんだよなあ…


マサキの理論武装見てると安心する

水流バトルも完璧な計算だったのに…今日変なとこでしくってたよな


16 :名無しさん@コグニスフィア:

>>15

理論厨の限界。見ててつまんね


17 :名無しさん@コグニスフィア:

新GMたちがタイセイの時代より劣ってるって言うけどさ

みんなめっちゃ頑張ってると思う

ソータの昨日の水流イベ凄かった


18 :名無しさん@コグニスフィア:

ソータの水流術、実は正統って聞いたけど

ガチのやつ?


19 :名無しさん@コグニスフィア:

>>18

その話題は荒れるから自粛推奨


20 :名無しさん@コグニスフィア:

アサハの音楽めっちゃ良くない?

この前の公演で泣いた


21 :名無しさん@コグニスフィア:

最近の噂まとめ

・レヴィ獣性暴走でセキュリティ起動(真偽不明)

・マサキの怪我

・シビルのスキャン精度アップ

・シノンの新企画

・ソータ外部視察増

こんなところ?


22 :名無しさん@コグニスフィア:

>>21

デマやめろ


23 :名無しさん@コグニスフィア:

マサキの怪我はガチだろ


24 :名無しさん@コグニスフィア:

セキュリティ起動もガチ


ロボ暴走→獣性で制止か

獣性暴走→ロボ制止かで

状況まったく違ってくるなこれ


25 :名無しさん@コグニスフィア:

某耳付きGM、アンチに餌やるようなことすんなよ…


26:名無しさん@コグニスフィア:

公式ではロボ誤作動、詳細調査中ってさ

アンチに餌やってんのどっちだよ


27 :名無しさん@コグニスフィア:

アンチの活動も増えてるよな…


28 :名無しさん@コグニスフィア:

る~し~の配信また削除されてて草

今度は何言ったんだ


29 :名無しさん@コグニスフィア:

今日シノンのエリアで亜人種の本に騒いでた奴居る?

そういうのいらないって


30 :名無しさん@コグニスフィア:

>>29

むしろ必要だろ

子供の教育に重要なんだよ


31 :名無しさん@コグニスフィア:

タイセイに比べたら全GMただの雑魚


32 :名無しさん@コグニスフィア:

>>31

お前いつもそれだな

現実見ような


33 :名無しさん@コグニスフィア:

今週のシビル研究室爆発事故件数:3回

平常運転で安心した


34 :名無しさん@コグニスフィア:

>>33

昨日から既に1回増えてるんですが、あの…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る