3
*
「えぇ!?
翌日の朝。1年A組の椅子に座るお客の女子が叫んだ。
今日は
料理係の男女はエプロン姿の妖精、
案内係の男女は魔女と魔王、
接客係の女子は眠り姫、男子達は王子の格好をしている。
そして私はなんと接客係。
あかりちゃん、
「ちょ、ホットパイ
「衝撃的なこと言うからじゃん笑」
「だから
「なんで出る気になったんだろ?」
「気分じゃない?」
「パイ食べてコーヒー飲んだら行こ」
「おう」
お客の女子2人が話し終えると、
「なんで出る気になったかってそんなの決まってるじゃん」
「ね~」
あかりちゃんは短く返す。
え。
原因、私?
「てかゆきのん、今日全然目合わせてくれないね」
「昨日先に帰っちゃったから怒ってる?」
あかりちゃんが尋ねてきた。
「ううん、そうじゃなくて…」
「なくて?」
「遠慮せずに言って」
私は迷った末、あかりちゃんの耳元で囁く。
「…昨日、ここで
「あ~、そっかぁ。そっちかぁ」
「やっと言ったんだ~」
え……。
「あかりちゃん、知って…」
「見てれば分かるよ~」
「それで返事はしたの?」
「まだ…。でも答えはもう決まってるから」
「うん、分かってる」
あかりちゃんは眉を下げて笑う。
「ゆきのん、正直に話してくれてありがと」
あかりちゃん……。
「あかり、
あかりちゃんは驚く。
「え!? もうそんな時間!?」
「あかり達、交代しよっか」
「級長ありがと」
「ゆきのん、2人の出番来ちゃうよ!」
あかりちゃんが私の右手を掴む。
「行こう!」
「うん」
*
「えー、続いてナンバー2のモテ男子、
野外ステージに立つ司会の男子がマイクで叫んだ。
その男子は髪をクリーム色に染め、ハートマークがついた黒キャップを被り、Tシャツにズボン姿でサングラスをかけている。
「おー! キタァー!」
男子達が盛り上がると、
「
女子達が発狂する。
「う~、めっちゃ、かっこいい~」
あかりちゃんが泣き出す。
私は驚く。
「え、あかりちゃん!?」
「あかり、まだ泣くの早いよ」
あかりちゃんが泣いちゃうのも分かる。
だって、
アピールって一体何をするんだろう?
ドキッ。
あ、
右手で右目を隠し、左目だけで見つめられる。
こんなのずるい。
ドキドキしちゃうよ…。
女子達は自分が見つめられていると思い、はぁ、と甘いため息を
~♪
曲がかかった。
胸が高鳴って、
かっこよすぎて、目が離せない…。
「
ちゃんと最後まで見届けなきゃ。
ダァンッ!
全員驚きの顔をし、
「おおっと!? バク転した!?」
司会の男子がマイクで大声を上げる。
汗だくの
「女子、余りのかっこよさに失神だ――――!!」
司会の男子がマイクで熱狂すると、
あかりちゃんは
だけど……。
私は泣くのを堪える。
その答えは変わらない。
「えー、すごかったっすね笑 俺も惚れちゃいましたよ」
「うわっ、みんなの視線冷たっ笑」
「お、準備が出来たようですね」
司会の男子がマイクで話すと、
「え? エレキギター!?」
女子達がざわめく。
「最後は急遽参戦! 宇宙を超えるイケメン、
司会の男子がマイクで叫ぶと、
「ギャー!
物凄い女子達の歓声が上がり、
男子達の声も聞こえてくる。
「やっぱ、出る噂マジだったんか」
すごいすごい、かっこいい…。
…え。
これって、も、もしかして……。
王子姿の
「てめぇら、行くぜ」
甘い声がマイクから響いた。
会場にいる全員をとりこにする。
「大人なんか信じられない」
「と君は言った」
「俺も大切にされてなかった」
「俺だって眠りたかった」
「と俺は答えた」
え、これって……。
「ますます眠れなくなった」
「と再会した君は言った」
「俺も眠れねぇ」
「と俺は答え」
「付け加えた」
あ、
バサッ。
広がった。
「だから俺はお前を絶対眠らせねぇ」
「ギャー!」
「何!? 告白!?!?」
女子達の甲高い悲鳴が上がり、
私の両目から大粒の涙が零れ落ちる。
もう、泣かずにはいられない。
ねぇ、
叶わないって分かってる。
届かないって分かってる。
だけど私、
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