2
*
それから文化祭の準備は順調に進み……、
「よし、明日の準備OK!」
9月27日の夜。1年A組であかりちゃんが舌をペロッと出し、右手の親指を立てながら言った。
「じゃあ、ゆきのん、帰ろっか」
「うん」
「ギャー! コーヒーがない!」
級長が悲鳴に近い声で叫ぶ。
「えぇ!? ホットパイにコーヒーは絶対いるよね!?」
「ど、どーしよ」
「確かコンビニでスティック100個入り売ってたはず」
級長が顎を掴み、考えながら言う。
「私、コンビニで買って来るね」
「あっ、ゆきのん!」
あかりちゃんが叫ぶ中、私は走って教室から出て行く。
そして高校近くのコンビニでコーヒースティックを1箱買い、
走って教室まで戻る。
「はぁっ、はぁっ…」
頭がズキズキする…。
だけどそんなこと気にしてられない!
ガラッ。
私は教室の前扉を開ける。
…あれ?
あかりちゃん達、いない…。
ピロン♪
スカートのポケットに入れてあるスマホから音が聞こえた。
あ、ラインかな?
スマホを取り出して通知画面を見る。
『ゆきのん、ごめん!
親に呼び出しくらって帰らないといけなくなった汗
級長も、もっちーに呼び出されたから、
悪いけど鍵閉めて帰ってね』
そうだったんだ…。
『うん、分かった。
気をつけて帰ってね』
私はラインを開いて返すと、スマホをスカートのポケットに入れて中に入り、教室中を見渡す。
改めて見ると内装綺麗…。
眠りの森にいるみたい。
『かわいー!』
『これ着るのちょっと恥ずい笑』
あかりちゃん、
『ホットパイ美味くね?』
『だね』
『ほら、行くぞ』
『届かねぇだろ、貸せ』
教室の薔薇の飾りつけして楽しかったな…。
文化祭準備のおかげで高校に夜までいられて、
家にいる時間も減って嬉しかったけど、
それも今日で終わりかぁ…。
寂しい…でも。
私は微笑む。
明日の文化祭、絶対成功させたいな。
コーヒー置いて私も帰ろう。
私はコーヒースティックの箱が入った袋を教卓に置く。
ガチャンッ!
え、何!?
「ギャー! 皿割れたー!!」
隣のクラスから女子の悲鳴が聞こえてきた。
びっくりしたぁ、隣のクラスか…。
お皿割れたんだ……。
パタパタッ…。
「
駆けて来た
え、
生徒会室でのミスターコンの打ち合わせ終わったのかな?
「あ、うん、大丈夫」
「隣のクラスでお皿割れたみたい…」
ズキンッ。
「ッ…」
私はガラスが割れるような頭痛に襲われ、
「あ、ごめ…」
胸から離れようとすると、
「全然大丈夫じゃないじゃん」
え、え…?
ど、どうしよう。
胸から離れられなくなっちゃった…。
あかりちゃんに申し訳ない!
早く離れないと!
「よ、
「…
私は目を見開く。
「え、なんで…」
「やっぱりそうなんだ」
「体育祭の時、思い出せて良かったです的なこと言ってたから」
「実は保健室での
えぇ!?
「
「盗み聞きしてごめんね」
「ううん」
「記憶喪失というか、私、中2の夏の一部の記憶失ってるみたい…」
「だから時々頭痛が起きて…」
「この首のネックレスも姫の証だから外しちゃいけないって
「姫の証?」
「私、
「それは確かなの?」
「分からないけど…
「
「…
「あかりはともかく、俺達の敵になるかもしれないってことだよね」
あ……。
でも私…。
ぎゅっと両目を閉じる。
「大丈夫」
え?
「少なくとも俺は離れる気なんてないから」
「だけど」
「
私は両目を見開く。
え……。
「敵の姫になる約束をしたかもしれない君が
「それに
「
「
「離れた方がもう苦しまずに済むんじゃないかな?」
確かに離れた方が記憶を思い出さずに済むのかもしれない。
ズキンッ。
「う…」
「
「ごめん、厳しい言い方して」
「でも俺、
「俺、
え……。
「この高校に入学した時、
「俺が登校するまで
「
「そう…なの?」
「うん」
私の両目が潤む。
クラスでずっとぼっちだって思ってた。
それなのに。
胸がきゅっと締め付けられる。
「それに一度だけ、
え、見られてたの!?
「天使みたいだな、綺麗で可愛いなって思った」
私が天使!?
綺麗で可愛い!?!?
目、大丈夫!?!?
「それで
「
「いつの間にか好きになってた」
「っ…」
「
「明日のミスターコンで1位になったら俺の姫になって欲しい」
ガラッ!
教室の前扉が開く。
「それは無理だな」
え、
なんで!? 帰ったんじゃ…。
「
「特攻隊長と奇襲隊長の2人が同じ女取り合ってモメてて親衛隊長補佐じゃ止めきれず呼ばれて俺と
えぇ!?
「それであかりに電話でまだ
「戻って来んじゃねぇよ」
「無理ってなんだよ。ミスターコン出ないお前に関係ねぇだろ」
「関係ある」
「さっき、俺の代わりに出る予定だった奴と話つけてきた」
え?
「明日、俺もミスターコンに出るわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます