5
*
しばらくして私はマンションの部屋に着くと、鍵で中に入る。
お母さんのヒールがあり、恐る恐る居間まで歩いて行く。
「あ、お母さん、ただいま…」
「ふざけんじゃないわよ!!」
バシャッ!
顔に缶ビールをかけられた。
え…………。
前髪からビールがぽたぽたと
「夏休みだからってこんな遅くまで遊び歩いて!」
「何!?」
「あの日のことぶり返すつもりなの!?」
あの日のこと?
カンッ!
お母さんは開いた缶ビールを地面に投げ捨てる。
「もうどっか行ってえええええ!!!!!」
悲鳴に耐えられない私は部屋に逃げ込む。
扉を閉めて崩れ落ちて泣いていると、
スマホが緑色に光り、
『部屋についたか?』
私は既読をするも返信に
すると電話がかかってきた。
私は慌てて電話に出るも、しまったと思う。
電話だとお母さんの悲鳴が聞こえてしまうから。
『
「…あ、うん」
私は小声で答える。
『8月18日、空いてるか?』
「…うん」
『その日、お袋は?』
「…仕事だと思う」
『じゃあ夏祭りに行くってことで』
夏祭りに行くんだ…。
「…みんなで?」
『ふたりで』
えぇ!?
ふたりで夏祭り!?
『18時45分にお前のマンションにバイクで迎えに行く』
『当日、ポニテな』
*
「あれ…私服…?」
8月18日の夜。マンション前に行くと
「最初の台詞それかよ」
「てっきり、特攻服かと思って…」
「夏祭りに特攻服はねぇわ」
「すぐ捕まるわ」
「だ、だよね…」
似合ってないポニテのまま、
初めて
ドキドキしていると
一瞬、触れられただけなのに、
心臓、壊れそう。
私はとりあえずバイクの車体に
「手はどこに…」
「俺んとこ」
私はバイクの車体に掴まる両手を離し、ぎゅっと
まずい。
まずいって。
心臓の音、聞こえちゃう。
「ちゃんと掴まってろよ」
「あ、うん」
「じゃあ行くわ」
*
15分後。川の土手に着いた。
ガードレールの向こう側には
「ここって中2の夏に来たよね?」
「あぁ。自転車で2人乗りしてな」
「俺の家からだと5~10分で着く」
「そうだったね」
「なんでここに?」
「約束しただろ」
「約束?」
私は首を傾げる。
「またここで一緒に花火見ようって」
その時、ヒュー…。
突然、大きくて綺麗な青い羽に包まれた赤オレンジ色のハートの花火が上がり、
ドォォン…。
夜空にキラキラと輝いた。
ズキン!
頭の中の絡まった茨が一気に眠りから覚め、物凄い痛みに襲われる。
「ああっ!」
「
*
中2の夏の映像が頭の中を駆け流れていく。
黒髪の
『ハートの花火、綺麗っ』
『内緒で来て良かっただろ?』
『
『うんっ、約束だよ』
私は満面の笑みで
花火が終わると、
裏道を自転車をひいて歩く
特攻服を着た水色髪の男子が現れる。
『誰の許可取ってここを歩いてる?』
ガシャーンッ!
『ざーんねん! もう逃げられないよ』
水色髪の男子がにっこりと笑った。
*
「嫌ぁっ!!!!!」
私は悲鳴を上げる。
「
私は
「ハァ、ハァ、ハァ…」
息を切らすと
頭痛は徐々に落ち着いていった。
全ての記憶を思い出すのも近いのかもしれない。
私と同じことを思ったように感じた。
私が落ち着いた頃には花火は終わっていた。
行きと同じで
すると前から白いバイクが走ってくる。
え、
「…まさか姫がこんなに美女だったとはな」
「…文化祭、楽しみにしてるぜ」
「…てめぇにだけは絶対
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