4
*
2つの線香花火がパチパチと輝く。
「花火の相手、私でごめん」
「は? 謝んなよ」
「
「それで私は拾われて
「しかも
「力を認めてもらって姫になるチャンスをくれた」
「時々、部屋に泊めてくれてパスタ作ってくれたりしたよね」
「コゲてたけど」
「おい」
「それだけで充分だった」
「充分だったのに」
「高校で
「自分が偽りの姫だったことが分かって…」
「本物の姫になりたいと思った」
「欲張りでごめん」
「私、
「
「本物の姫だ」
「
「でも俺はあいつを守らねぇといけねぇ」
「…うん」
「
「ありがと」
ポトッ。
ふたつの線香花火が同時に落ちた。
小雨が降ってくる。
「え、雨!?」
あかりが驚く。
「砂浜の海の家は閉まったけど」
「階段上がったとこの海の家はまだやってるから行こう」
「…って、あれ?
「花火取ってくるって…なんで戻って来てねぇんだ?」
「俺が目を離してた隙に…クソッ!」
「
「俺は
「おう」
「分かった」
ダッ!
「そんな遠くには行ってねぇはず…」
「!」
転がった左右の靴が浜辺に落ちていた。
「これ、
「
師匠である
「なんでここに…」
「久しぶりに遊ぼうか」
ナップサックからインクタンク式ウォーターガンを取り出すと、
シュッ。
「この中には赤いインクの水が入ってる」
「当たった方が負けだ。いいな?」
「あぁ」
岩の屋根に溜まった雫が海に落ちた瞬間、
連射が始まった。
*
雨の…音?
「ん…」
私は目を覚ます。
え、岩?
ここ、どこ?
ハッとする。
そうだ私、
「!」
海の浅瀬で激しい連射と赤い水しぶき。
え、
なんで撃ち合って…。
ウォーターガンなのに、まるでマシンガンのような10連射。
体を右に少し捻り、両太ももに4連射を放つ。
バシャバシャッ!
バシュッ!
ズズズッ。
「終わりだ」
「
私は立ち上がり、駆けていき、
バシュッ!
「っ…」
私は背中を撃たれ、パーカーに赤色のインクがついた。
ズキンッ!
私は頭の中に絡み合った茨が目覚めたかのような痛みに襲われる。
『もうやめて!』
『
ドカッ!
背中を蹴られる。
『あっ…!』
『
今と同じく庇う映像が流れた。
「うぅ…」
私は抱き締めたまま崩れ落ち、その場に座り込む。
「
「これが実弾なら死んでいたぞ」
「彼女の勇気に免じて訓練は終わりだ」
私は驚く。
訓練…だったの…?
「そんなんじゃ
「もっと強くなることだな」
ウォーターガンを回収し、ナップサックに2つ入れて去っていく。
「大丈夫か?」
「あ、うん」
「
「あぁ」
「守れて良かった…」
「ふざけんじゃねぇよ!」
私の体がびくつく。
「何一人で勝手に行動してんだよ!?」
「髪も結んでるしマジねぇわ!!」
「ごめ…」
私が謝りかけると、
いけない、こんなの。
だって、
私は離れようとするも
「
「…振った」
私は両目を見開く。
「え…? 振った…?」
「
「あぁ」
「な、なんで…」
「いい加減、分かれよ」
そんなこと言われたら自惚れちゃうよ…。
ねぇ、
なんで
乗っ取ってまで総長になりたかったのはどうして?
聞きたいけど怖くて聞けないよ。
それから背中を
パーカーの赤色のインクが雨で流れ落ちたことが分かると、
しゅるっ。
髪のゴムをほどかれる。
私は渡されたゴムをパーカーのポケットに入れ、
海の家までおんぶしてもらい、
「
「ゆきのん! よかったぁ」
私と
そして雨が止むと、みんなで海の家から駅まで歩き、
行きと反対側のホームから電車に乗る。
隣には少し髪が湿った
かっこよくて、色気もあって、
揺れ動く電車の中、
私は一睡も出来なかった。
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