3


「海鮮焼きそば、うんめぇ!」

 15分後。海の家でしゅんくんが叫んだ。


 海の家のパラソルが刺さった白色の長い丸テーブルの椅子に、

 私、そらくん、しゅんくん、

 前に美青みおちゃん、あかりちゃん、耀ようくんが座っていて、


 テーブルには注文した海鮮焼きそば6つと練乳トッピングのかき氷6つ(あかりちゃんと耀ようくんのメロン、私としゅんくんのイチゴ、そらくんと美青みおちゃんのブルーハワイ)がそれぞれ並んでいる。


 海鮮焼きそば、美味しい。

 イチゴのかき氷、キーンとする。


「あかり、めっちゃかき氷食べるじゃん」

 ブルーハワイのかき氷を一口食べた美青みおちゃんが突っこむと、


 あかりちゃんはメロンのかき氷を食べながら笑う。

「えへへ。心配かけてごめんね」


「…あかり、本当は俺達の秘密知ってるでしょ?」

 耀ようくんがあかりちゃんに小声で尋ねる。


「…えー? なんのこと?」


「…真剣に聞いてるんだけどな」


「…詳しくは知らないけど」

「…あれだけ色々あったら何かあるんだろうなって気づくよ」

「…それに私、そらの幼馴染だし」

「…耀よう達と住む世界が違うんだったとしても、私は変わらないから」

「…ずっと傍にいるから」

 あかりちゃんは満面の笑みを浮かべる。


「…ありがとね」

 耀ようくんがお礼を言う。


 あかりちゃん、耀ようくんと仲良しになれたみたいで良かった。


「よし、そろそろ、ビーチバレーやろうぜ」

 しゅんくんがそう言うと、私達はまた浜辺に行く。



「はい、そら

 浜辺で耀ようくんが、ぽんっとボールを投げ渡すと、


 シュッ!


 浜辺に張った網ネット目掛けてそらくんが飛び上がり、ボールをアタックする。


「5対1ってなんだよ!」

「俺一人で拾える訳ねぇだろ!!」

 しゅんくんが不満げに叫ぶ。


「キャー! 紫髪の子、かっこいいー!!」

 水着の女子達が甲高い声を上げた。


 そらくん、ここでも、凄いなぁ。


「あっ! ゆきのん、見て見て」

「可愛い貝あったよ~!」


「ほんとだ、可愛い」

 私とあかりちゃんは笑い合う。


「ふたりとも、それっ!」


 バシャッ!

 美青みおちゃんが水をかけてきた。


美青みお、やったな~?」

 あかりちゃんが反撃する。


「わ、冷たっ!」


「あはは」

 私は笑う。


「あ!? いつの間にか美青みお達抜けてる」

「ビーチボール終わり! 泳ごうぜ」

 しゅんくんが提案すると、


しゅん、片付けよろしく」

 耀ようくんがそう言い、そらくんと海で泳ぎ始める。


「おい待てコラー!」

 しゅんくんは叫ぶ。


 美青みおちゃんも美しいフォームで泳いで男子達のハートを掴んだりして、19時前。

 海の家のコインシャワーで着替え、海の家が閉まる(平日は17時で閉まるけど、今日は日曜日で2時間延長)と、バケツと予めコンビニで買ってきていた線香花火を準備して、

 夕陽が沈んだ夜空の下で線香花火をやり始める。


美青みおそらと線香花火してきなよ」

 あかりちゃんがそう提案すると、


 美青みおちゃんは断る。

「え、いい。雪乃ゆきのこそそらと」


「私、あかりちゃんとふたりでやりたいから」


「…分かった」

そら、一緒にやってもいい?」

 美青みおちゃんが尋ねる。


「あぁ」


 美青みおちゃんはそらくんのところまで歩いて行く。


「ゆきのん、線香花火綺麗だね~」


「うん」

「あかりちゃん、耀ようくんとこ行って」


「え!?」


「私はしゅんくんとやるから」

 私が強く言うと、


「あ、あ、ありがと」

 あかりちゃんは耀ようくんのところへ行く。


しゅんくん、一緒にやってもいいかな?」


「いいぜ」


 線香花火をしながら、私は気づいてしまう。

 美青みおちゃんを複雑な気持ちで見守るしゅんくんに。


しゅんくん、私、線香花火取って来るね」


「分かった」


 しゅんくんはずっと、美青みおちゃんを見てる。

 私はそらくんを見ていられない。


 しゅんくんの隙を突いて私は線香花火を取りに行くフリをして一人で浜辺を歩いて行く。


 ここまで離れたら大丈夫だよね。


 私はうっとうしいボサ髪をパーカーのポケットに入ったゴムでポニーテールに結ぶと靴を左右脱ぎ、右手で持つ。

 そして裸足で再び浜辺を歩き始める。


 美青みおちゃんとあかりちゃん、上手くいくといいなぁ。


 そう思う反面、涙が止まらない。


「美女がこんな夜に一人で海?」


 一つに結んだ緑色の髪。

 大人びた雰囲気を放ち、

 右肩にナップサックをかけ、

 上半身裸にナチュラルなサーフパンツを履いた男子が立っていた。


「美女? どこ?」

 私は振り返る。


「君のことだよ。雪乃ゆきのさん」


 えぇ!?

 私!?


「あ、あの、なんで名前…」


そらから聞いていたから知ってる」


 え、そらくんの知り合い!?

 こんなかっこいい人が!?


「えっと、そらくんとはどういう関係…」


「俺は久世頼くぜらい。26歳でそらとは10歳違う」

「俺が中2の秋からそらに喧嘩のやり方を教え続けた」

「だからそらは高1の春の内乱で総長になれたんだよ」


 え……。


「どういう…ことですか?」


そら鬼雪おにゆき4代目総長雪平柾ゆきひらまさきが卒業後、ナンバー2、3を倒して見事乗っ取りに成功して総長になったんだよ」


 乗っ取りに成功した?


「なんで…」


 トンッ。

 突然、首を叩かれ、目の前が真っ暗になっていく。


 そら…くん…。


 私は久世くぜさんの胸に倒れた。

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