2


「やったー! 夏休みキター!」

 7月19日の終業式。1年A組で男女共に歓声が上がった。


「浮かれて事故るなよ」

 望月もちづき先生が教壇で言う。


「もっちー、夏休みデートするん?」

 男子が聞くと、


「さぁな」

 望月もちづき先生は、はぐらかす。


「うわー! ぜってぇするだろ!」


「ゆきのん」

 あかりちゃんが美青みおちゃんを連れて私の席まで歩いてくる。


「話し合ってそら達と7月28日に海に行くことになったけど」


「行く!」


 あかりちゃんに勢い良く返すと驚く。

「わ! びっくりしたぁ」


 美青みおちゃんが座る私の両肩をガシッと掴む。

「そうと決まれば今から水着見に行こ」


「へ」



雪乃ゆきの、早くパーカー脱ぎなよ」

 7月28日の17時。美青みおちゃんが浜辺で言った。


 美青みおちゃんは大人のセクシーさと上品な可愛さがある黒のクロスデザインビキニにショートパンツと一体型のデザインの黒のスカート、


 あかりちゃんはストライプブルーの首の後ろで結ぶオフショルダーフリルビキニのヒップにティアードフリルが付いてて可愛い。


 私はグレーのパーカーにピンクのスカートを水着の上から着ている。


 ふたりに水着選んでもらったものの、

 ボサ髪に、こ、こ、この水着は……。


そらも見たいよね!?」

 美青みおちゃんが尋ねると、


「…………」

 上半身裸の上に黒のパーカーを羽織り、

 カジュアルかつかっこいいフェザー柄のサーフパンツを履いたそらくんは何も答えない。


「…素直に見たいって言えよな。ツンデレ総長」

 上半身裸の上に柄付きパーカーを羽織り、お洒落なグレー系のグラデーション模様のサーフパンツを履いたしゅんくんがボソッと囁くと、


「あ?」

 そらくんがブチ切れる。


「すんません…」


「俺は見たいな」

 上半身裸に派手過ぎない柄で大人っぽいサーフパンツを履いた耀ようくんがそう言うと私の顔が熱くなる。


「もー、仕方ないな。はい、オープン」

 美青みおちゃんがパーカーのチャックを下げ、スカートも脱がせた。


「!!」

 私は驚く。


 ピンクのトップスのバスト部分に柄付きブルーの程よいボリューム感のフリル(大きなリボンみたいに見える)。

 ピンクのハイウエストショーツのフロントの装飾リボンに、

 さりげないV字ライン。


 水着は可愛いけど、全く似合ってないよね…。

 は、恥ずかしい…。


 耀ようくんが、にこっと笑う。

雪乃ゆきのちゃん、大人可愛いよ」


 お、大人可愛い!?


「ね、ゆきのん、可愛いよね!!」

 あかりちゃんが耀ようくんに返すと、ふっ、と笑う。


「あかりも可愛いよ」


「っ…」

 あかりちゃんの顔がボッ! と赤くなる。

「お、泳いでくる!」

 そう言って浜辺を走り、海に飛び込む。


 あかりちゃん、海に!

 …あれ? ビキニの首のリボン気にしてる?


 ごぽっ…。

 あかりちゃんは沈んでいく。


 え……。


「私達も海で泳ご…あれ? あかりは?」

 美青みおちゃんが尋ねる。


「あかりちゃん!」

 私は海まで駆けていく。

 そして助けようとして泳ぎかけると追いかけて来たそらくんがパーカーを脱ぎ捨て、海に入って来て止められる。


「泳げねぇだろ!」


「でも!!」


 ザパーンッ!

 駆けて来た耀ようくんが海に飛び込んだ。


 お願い。

 耀ようくん、あかりちゃんを助けて。


「ぷはぁっ」

 耀ようくんが溺れたあかりちゃんと一緒に上がってきた。


「あかり!」

「大丈夫か!?」

 駆けて来た美青みおちゃんとしゅんくんが叫ぶ。


「うん、大丈夫!」

 あかりちゃんがピースすると、


「大丈夫じゃないでしょ」

 耀ようくんが水着のリボンをきゅっと結び直す。


「あ、あ、うん、大丈夫じゃない…」


 私とそらくん、あかりちゃんと耀ようくんはそれぞれ浜辺に上がる。


「もー、海来て早々、何やってんの!」

 美青みおちゃんは、あかりちゃんを抱き締めた。


「とりあえず、海の家で休もうぜ」

 しゅんくんがそう言うと、私達は歩いて行く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る