secret sleep6⚘約束しただろ。

1


 私は部屋のベットの上でぺたりと座り込む。


 保健室でそらくんに抱き締められてからずっと、心も体も熱くて、


 頭が時々ズキズキする。


 私は一筋の涙を流す。


 眠れない今日がずっと続けばいい。



花城はなしろさん、ちょっといい?」

 翌日の4限のテニスが終わると、ツインちゃんが話しかけてきた。


「あ、うん」


花城はなしろさんってさ、彼氏いたんだね♡」

 ツインちゃんが、にこっと笑う。


「え?」


「可愛いお前を見に来ただけだ、って昨日彼氏に言われてたでしょ」


 見られてたの!?


「パーカーも貸し借りしてるとか熱々だね♡」


「あ、彼氏じゃな…」


 でも、姫になるって約束してるんだから、

 彼氏になるのかな……。


そらくんがほんとに義妹ぎまい役で花城はなしろさんの傍にいるの分かって安心したよ」

「お幸せにね♡」

 ツインちゃんが歩いて行く。


「ねぇ雪乃ゆきの、今のどういうこと?」

 美青みおちゃんが尋ねてきた。


 私の顔が青ざめる。

美青みおちゃん…」


「パーカーってりゅうに返したんだよね?」


「あ、うん…」


りゅうが体育祭に来てたことはそらから聞いたけど」

「彼氏って…嘘だよね?」


 私は俯く。

「分からない…」

「そうなのかもしれない…」


「何それ…」


 グイッ!

 美青みおちゃんが私の胸倉を掴む。


 あ、美青みおちゃん泣いて…。


「否定してよ!」



雪乃ゆきののこと仲間ともだちだって思ってたのに!!!!!」



美青みお!? 何やってるの!?」

 あかりちゃんが駆けて来た。


 美青みおちゃんが胸倉からパッと手を離す。


「ごほっ…」

 私は咳き込む。


「何があったの?」

 あかりちゃんが心配そうに尋ねると、私は無言で駆けていく。


「あ、ゆきのん!」

 あかりちゃんが叫ぶと美青みおちゃんはあかりちゃんに寄りかかり呟く。


「…冷静になれなかった」

「…否定したけどやっぱり、そらのことが好きだよ」


 あかりちゃんが切なげな顔をする。

美青みお…」


 走りながら大粒の涙がこぼれ落ちていく。


 私はそらくんが好き。

 だけど否定出来なかった。


 記憶をぜんぶ思い出したら、

 りゅうくんの姫、つまり彼氏で、

 美青みおちゃんの、

 そらくん達の敵になるのかもしれないから。



 その後1年A組で私と美青みおちゃんは、


雪乃ゆきの、さっきはごめん。胸倉を掴んで痛かったよね?」


「ううん。私こそ、ごめんなさい」


「はいっ、これで仲直り」

 ふわりと笑ったあかりちゃんに背中を押され仲直りをし、


 期末テスト週間も、みんなでカラオケ月猫店で勉強して、

 6月26日からの期末テストを3日間、土日を挟み2日間受け……、


 7月10日。最後の教科、国語のテストが返ってきた。


「えー、今からベストを発表する」

 1年A組の壇上で国語の先生が言う。


「ベストは黒沢くろさわ花城はなしろ、50点だ」


 えぇ!?

 私も!?


「キャー! そらくん、すごーい!」

 女子達の歓声が上がった。


花城はなしろさんも50!?」

「どうなってんの!?」

「義妹だからって点数まで同じにすることねぇじゃんね、ぶあははっ」

「なんか彼氏出来たって女子達が騒いでたぜ」

「マジで!?」

 男子達の声を聞き、私は複雑な気持ちになる。


「…雪乃ゆきのちゃんって彼氏いたんだね?」

「…それでも俺は構わないけどね」

 耀ようくんが小声で後ろから話しかけると、そらくんは机に伏せ寝する。



「…うるせぇよ」


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