2
*
「え、ここ、
放課後。カラオケ月猫店の部屋であかりちゃんが声を上げた。
部屋は明るく暖かな雰囲気が漂っていて、
ソファーには扉近くから私、あかりちゃん、
反対側のソファーに
テーブルには月猫セット(唐揚げ、ポテト、切ったレモン、ケチャップ、ソフトドリンク)と、
ソフトドリンクは
あかりちゃんのレモンティー、
「うん」
「えー、知らなかった。ゆきのんは知ってた?」
「ううん、知らない」
「もー、幼馴染なんだから教えてくれてもいいのに」
「ゆきのんだって義理の妹なんだし」
「まぁ、ふたりは一般人だからね」
「え、どういう意味?」
あかりちゃんが聞き返す。
「そのまんまの意味だよ」
「えー?」
一般人…そっか。
“世界が違う”ってことかな。
私達、暴走族に入ってないもんね…。
「あの、
私は声をかける。
「調理とホール」
「そっか…」
私は
あぁ、キラキラしてて、かっこいいだろうなぁ。
「お前等、手が止まってんぞ。勉強しに来たんだろ?」
私以外、お前が言うな、という目で見る。
「は? 何その目、怖ぇえ」
「そういえばさ、受験の時もここでこうやってみんなで勉強したね」
「え!? そうなの!?」
「あぁ。俺と
「
「中3の夏に
「俺と
「まぁそのおかげで全員合格出来たんだけどな」
「なんでそんな必死なんだって思ってたら」
「
「余計なこと言うんじゃねぇよ」
なんだか恥ずかしいな。
私はコーラフロートを取って飲む。
「あ、それ、俺の」
え、よく見たら飲みかけ…。
これって、か、か、間接キス……。
「え、ご、ごめ…」
私の顔が、かあっと熱くなる。
私、ココアフロートだったのに間違えちゃうなんて…。
「…ねぇ、もしかして、ゆきのんって
あかりちゃんが小声で話しかけてきた。
「…え」
更に顔が熱くなった。
「…やっぱり~。そうかもってずっと思ってた」
えぇ!?
バレバレ!?
「…あ~、どうしよ」
あかりちゃん、迷ってる?
あかりちゃんはチラッと
分からないけど、
「…よし、決めた。内緒で見守るね」
「…え、あ、うん。ありがとう」
「じゃあ私、トイレ行って来る!」
あかりちゃんはそう言うとソファーから立ち上がる。
何かを察した
「私も」
「俺も行こうかな」
「なんだよ、みんなして。じゃ、俺も」
あかりちゃん、
え…みんな行っちゃった。
もしかして、あかりちゃん達、気を遣ってくれたのかな。
「あれから頭痛起きてないか?」
「あ、うん、大丈夫」
この状況は全く大丈夫じゃないけど…。
「そう」
ガチャッ。
部屋の扉が開く。
え、もうみんな戻ってきた?
「誰かと思えば
オレンジ色のロン毛。
両耳に十字架のピアス。
着崩した焦げ茶のブレザーに夕陽と王冠のエンブレム。
赤と青チェックのネクタイ。
青と紺チェックのズボン。
え……。
だ、誰!?
「…全国トップ3の暴走族
「…
え、全国トップ3の総長!?!?
「まさか、ここで会えるなんてな」
「なんて、嘘だけど」
「色々潰してきて」
「偶然、東京に寄ることになったから挨拶しに来てやったよ」
「…あれ? 人がせっかく挨拶しに来てやってんのに無視してお勉強かよ」
あっ、
「総長が勉強とかクソダサイことしてんじゃねぇよ」
ビリビリビリッ!
「な、何するの!」
私がそう声をあげると、
「あぁ?」
「ボサ女は黙ってそこで見て怯えてろ」
いつも
だから今日は私が守るの。
私は立ち上がると、反対側のソファーに座る
「あぁ?」
「じゃ、邪魔するなら帰って下さい!」
ズキンッ!
頭の中で絡み合った
中2の夏に
「う…」
私は右手で頭に触れる。
「
「座ってろ」
「へぇ、俺のことはずっと無視ってたくせに」
「ボサ女には反応するんだ?」
ダァンッ!
「次、ボサ女って呼んだら殺す」
「いい顔見れたし今日はこのまま帰ってやるよ」
「
「うん、もう平気」
私がそう言うと、
「え!?
「今、ウチらの部屋から出て来たよね!? なんで!?」
あかりちゃんの驚いた声が廊下から聞こえてきた。
「おら!」
「待て!」
「
「ゆきのん、大丈夫!?」
「あぁ」
「うん、大丈夫」
私は笑って答えるも不安に襲われる。
校外学習の時は痛みだけだったのに――――。
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