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 そして6限は終わり、望月もちづき先生が教室に入って来て、帰りのHRホームルームが始まった。


「――――GWゴールデンウィークに入るが」

「10日の校外学習の班もちゃんと考えておくようにな」

 望月もちづき先生が教壇で言った。


 10日に校外学習あるんだ…。

 そらくんと一緒になれたら…。

 でも人気者だから難しいかも…。


花城はなしろさん」

「昨日行く予定だったけど休みで行けなかったから、今からそら達とムーンバックス行くんだけど大丈夫?」

 鞄を右肩にかけたあかりちゃんが声をかけてきた。


「あ、大丈…」


 “お前みたいなボサ頭は家でずっと籠もってればいいんだよ”


 ふと国語の先生の言葉が脳裏に浮かび上がる。


 私、一緒に行ってもいいのかな。


「あかり、先に行ってろ」

「俺、今日、日直だから」


そら、日直って笑」

 耀ようくんとしゅんくんと美青みおちゃんが笑う。


「おいコラ、笑ってんじゃねぇ」


「うん、分かった。先に行ってるねー」

 あかりちゃんは耀ようくん達と教室から出て行く。


 そして、周りのみんなも出て行き、ふたりきりになった。


雪乃ゆきの、6限の授業中、あいつに何言われた?」


「え?」


「正直に言え」


「…お前みたいなボサ頭は家でずっともってればいいんだよ…って言われた」



「お前は花の城で閉じもれない」

「眠れない姫だから」


「もう雪は溶けて春だ」

「ありのままの姿で花の城から出て、お前は変わっていける」

「どこまでも」



 さっきまでの迷いが、まるで翼に変わって飛んでいく。


「っ…」


 もう、泣かずにはいられない。


 廊下から走ってくる足音が聞こえた。


 そらくんはとっさに、


 パサッ。

 制服の上からパーカーを両肩にかけ、フードを被せる。

 そして私の前に背中を向けて立つ。


 廊下を2人の女子が駆けていく。


 私は被せられたフードをぎゅっと右手で掴みながら号泣する。


 黒沢くろさわから花城はなしろに戻った時、

 また一人ぼっちに戻ったんだって絶望した。

 だけど、


 “お前は変わっていける、どこまでも”


 そらくんが花城はなしろに光をくれた。


 私、

 そらくんと一緒に変わっていきたい。



「…あ、やっと来た」

 20分後。ムーンバックスであかりちゃんが、ふわりとした口調で言った。


 店内は大人な雰囲気で高級感があって、

 ペンダントライトは、ぽんぽんと空中に浮いているかのようで可愛らしい。


 あかりちゃんは私の服装を見る。

花城はなしろさん、それそらのパーカー?」


「あ、うん。寒いから着てろって言われて…」


 ぽん。

 突然、後ろから誰かが頭に手を乗せてきた。

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