5

 私の両目から大粒の光が零れ落ちていく。

「はい」


怜王れお

 月沢つきさわくんは私の右耳からスマホを離し、自分の右耳にスマホを当て直す。


『生きてありすを幸せにするんだよ。分かったね?』


「はい、約束します」


『では、また繋がることを祈っているよ』


 電話がプツンと切れた。


「…星野ほしの?」


 のぞむ先輩の言葉を聞いたら、無性に月沢つきさわくんに抱かれたくなった。

 初めての月沢つきさわくんの部屋だから余計に。


「…ねぇ、月沢つきさわくん」


「…何?」


「お願い」

「最後まで、して」


 月沢つきさわくんは両目を見開く。


「…最後って、ちゃんと意味分かって言ってる?」


「分かんない」


「…分かんないのかよ」


「でも前に夕日ゆうひちゃんから聞いて…」


 月沢つきさわくんは驚きの目つきをする。

「…マジか」


「うん」


 月沢つきさわくんは、はー、と息を吐く。

「…うつるからまた今度…」


 私は月沢つきさわくんの唇に唇を重ねる。


 ドサッ……。

 月沢つきさわくんがベットに倒れた。

 私は唇を離す。


「…おい、ほし…」


「うつってもいいよ」

月沢つきさわくん……うつして」

 私はそう言うと再び唇を重ねる。

 そして離そうとした時、


「…離すなよ」


 月沢つきさわくんに頭を押さえつけられ、唇が触れ合う。


 しゅるっ。

 オフホワイトのゆるTシャツの裾のリボンがほどかれ、

 甘く、柔らかいものが絡んできた。


 なんか…いつもと違う。


 本気…モード?


 プチッ。

 リボン付きの白いブラのホックを外すと、しゅるっ。


「っ…!?」


 白いブラの肩紐を一瞬で外された。


 月沢つきさわくんの極上の甘さに体中が壊されていく。


つき…も、だめ…」


 そう言うと唇を離してくれた。

 私は月沢つきさわくんの上でぐったりする。


 あ…頭ぽんぽんされ……。


 ――――ドサッ!


「きゃっ」


 月沢つきさわくんにベットに押し倒された。


「…俺はまだ、うつし足んねぇ」


「んっ……」


 スカートに手が……。


 もう…言葉にならない。


 密着して、

 体が壊れてく……。


 月沢つきさわくんは唇を離す。


 え……月沢つきさわくんも、なんか辛そう?


「はぁ…お前のせいで、熱、上がったわ」


 月沢つきさわくんは耳元で甘く囁く。


「…怜王れおくんって、もう一度呼べよ」


…」


 呼吸が苦しくて呼べない。


「…まぁ今はいいわ、それで」


 ずるっ。

 月沢つきさわくんは私のゆるTシャツを左だけ胸までずらすと、


「…最後以上の、記憶に残るの、してやるよ」


 私の心臓に直接、壊れそうなくらい深くて甘いキスを落とす。


「んああっ……」


 私の心に絡まったリボンがほどけて、飛んでいった。


 ドサッ……。

 月沢つきさわくんは私の隣に倒れる。


 あ…月沢つきさわく……。

 目の前が真っ暗に……。


 私は震えた手を伸ばす。

 月沢つきさわくんが私の手をぎゅっと掴む。


 見えないのに月沢つきさわくんが笑ってくれた気がした。

 私も幸せそうに笑うと意識を失った。



 そして、7月16日の朝。氷雅ひょうがお兄ちゃんが迎えに来た。


 ガチャッ。

 月沢つきさわくんが扉を開ける。

 制服姿の氷雅ひょうがお兄ちゃんが立っていた。


「…ありす、先に帰ってろ」

 氷雅ひょうがお兄ちゃんが、ぶっきら棒な口調で言う。


「……うん」


 私は靴を履いて、外に出ると自分の部屋まで歩く。

 だけどふたりが心配で隣の開いた扉をそっと見守る。


 大丈夫……だよね?


「てめぇ、俺がいない間に一体どういうつもりだよ?」


「…俺んとこのナンバー2が勝手にやったことだ」


「あ? てめぇがありすに会いたくて仕組んだんだろうが」

 氷雅ひょうがお兄ちゃんは月沢つきさわくんの胸倉をグイッと掴む。


「てめぇがいる限り、ありすはもてあそばれ続ける」


「…だったらなんだよ?」


 氷雅ひょうがお兄ちゃんは冷酷な顔をし、耳元で呟いた。


「…17日の深夜、全員連れて例の場所に来い。決着をつける」


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