3
*
「んっ…」
しばらくして目覚めるとなぜか部屋のベッドだった。
あれ…いつの間に部屋に着いて…。
服(袖と裾にフリルがつき、背中にクロスストラップがついた薄いブルーのトップスとウエスト部分にリボンがついたショートパンツ)も変わってない…。
「入るぞ」
黒髪の
「起きたみてぇだな」
私はびっくりして起き上がる。
「え、私、なんで…」
「玄関で起きろって何回呼びかけても爆睡してて起きねぇからここまで運んだ」
え、爆睡…!?
恥ずかしい……。
「ほら、さっさと食って飲め」
アイスコーヒーに味噌雑炊…凄い組み合わせ……。
それに黒髪だと、なんだかお兄ちゃんじゃないみたい。
「なんだ? 食えねぇなら俺が食べさせてやろうか?」
「だ、大丈夫。一人で食べれるから」
私はおぼんの上の味噌雑炊を手に取るとスプーンで一口食べる。
「お、美味しい」
私はパクパクと味噌雑炊を食べていく。
「そうかよ。あー、あん時のお前の茶漬けひどかったな」
「ちょ、思い出さなくていいから!」
あ、いつも通りだ。
大丈夫、このまま兄妹に戻れる…よね?
「おい、ついてんぞ」
「ありが…」
私と
「…バイトの時間だから行くわ」
「味噌雑炊、キッチンの鍋の中に入ってるから好きなだけ食えよ」
「あ、うん」
ぱたん、と扉が閉まる。
私はおぼんの上に味噌雑炊を置いてアイスコーヒーを一口飲むと、自分の髪に触れる。
顔が熱い。
それに……。
“私は
*
その日の深夜。私は部屋で裾にリボンがついた黒のゆるTシャツに着替える。
下は短パンのままでいいよね。
本当はベランダに出たくない。
出たら終わってしまうから。
だけど、それでも、
――――ガラッ。
私は扉を開けてベランダに飛び出す。
夜空に月は出ていなかった。
どうしよう、仕切り板、怖くて見れない…。
「…髪の色、やっぱ綺麗だな」
仕切り板の穴から隣のベランダに立っている
白のTシャツにネイビーのTシャツを重ね着し白のスキニーパンツを穿いている。
私は両手を自分の口に当てる。
あぁ、会えた。
生きて、会えた。
「
「…食べるか?」
「うん」
私は仕切り板に近づいてとっさに手を伸ばす。
袋に入った白いサワー味のアイスキャンディーを受け取った瞬間、指先が少し触れた。
私はすぐに手を引っ込める。
「…何かあった?」
「え?」
「…泣きそうな顔してる」
私は
「…
「私…
「…そう、嬉しく…ねぇの?」
「え?」
「…あいつと付き合いたいって思ったことは?」
私と
「ないよ…」
「…あいつが思ってたら?」
私はドキッとする。
「やめて、そんなのある訳ないよ」
「…だよな」
「うん…」
「それで今日の早朝、喧嘩して部屋飛び出して」
「気づいたら小学6年の時、
「
「
「その後、
「
「
「って脅されて私…」
私はぐっと涙を堪える。
「“
「…それってあいつを選んだってことだよな?」
「……うん」
ねぇ、
今どんな顔してる?
「…そう。やっぱり」
「…ほどいて欲しかったの、俺じゃなかったんだな」
私の両目から光が消える。
恐る恐る
痛々しいくらい甘く切なげな表情を浮かべていた。
私は見ていられなくて逃げるように自分の部屋に入った。
扉の鍵をかけ、
――――シャッ!
水色にゴールドの星柄がついたカーテンも思い切り閉め、その場で崩れ落ちる。
「
私はぎゅっとアイスキャンディーの袋ごと抱き締める。
「ごめん…なさ…ごめん…なさい…」
「うわああああぁぁぁぁ……」
「ありす、大丈夫か?」
私はハッとする。
やばい。
私は鞄のファスナーを開け、アイスキャンディーを袋ごとタオルに包んで突っ込むと鞄を再び閉めた。
「おい、ありす!」
「入って来ないで!」
「大丈夫だから…もう放っておいて」
あ、
「…………」
「…ありす、お前にずっと隠してたことがある」
え……?
「俺はお前のこと、一度も妹だって思ったことはねぇ」
私は立ち上がると部屋の扉まで歩いて行き、
――――バァンッ!
扉を勢いよく開けた。
「やっぱ、泣いてんじゃねぇか」
「…なんで?」
「なんで今、そんなこと言うの!?」
「私…妹に戻る為に必死だったのに!!!!!」
肩を震わせ、泣き叫ぶと
「分かってた…だけど悪ぃな」
「お前の気持ちに答えてやれねぇ」
「ありす、俺はお前が好きだ」
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