3


 月沢つきさわくんは、ふっ、と笑う。

「…ふたりとも大嫌いなのに?」


月沢つきさわくんの意地悪…」


「…じゃあ意地悪ついでに、はい、して」

 月沢つきさわくんは私を抱き締めたまま両目を瞑る。


「え……」


「…充電しねぇと星野ほしのバイクで送って行けねぇわ」


 私は困った挙句、月沢つきさわくんの唇に軽くキスをする。


「…あー、全然足んねぇ」

 月沢つきさわくんは両目を開け、私に唇を近づけてきた。


「…はい、もっとして?」


 前にもこんなことあった。

 あの時はまだ出来なかったけど…。


 私は月沢つきさわくんの唇に自分の唇を重ねる。


 月沢つきさわくんは両目を見開く。


 唇を離そうとすると私の頭を左手で優しく押え、月沢つきさわくんが舌を絡めてきた。


 背中からセーラー服に右手を入れ、


 プチッ。

 リボン付きの白いブラのホックを外すと、しゅるっ。


 白いブラの肩紐を一瞬で外された。


「…!」

月沢つきさわく…」


 胸に月沢つきさわくんの綺麗な手が触れ、体がびくつく。


 月沢つきさわくんは優しく触れながら深いキスを続ける。


 声が出そう。

 だけどここ駅…今は誰もいないけど、もし誰か来たら……。


 月沢つきさわくんが胸をぎゅっと掴み、深くてとろけるような甘いキスをした。


「あっ……」


 ガクンッと足の力が抜け、月沢つきさわくんが私の体を支える。

 そして、耳元で甘く囁く。


「…ありす、好きだよ」


 月沢つきさわくんは胸を撫でながら、ちゅ、と私のうなじにあとをつける。


 誰にも聞かせられないくらいの恥ずかしい声が出て、

 月沢つきさわくんと一緒にその場で崩れ落ちた。


「はぁっ、はぁっ……」


 月沢つきさわくんが外したリボン付きの白いブラのホックを付け直し、背中を優しく撫でる。


月沢つきさわく…あと…」


「…あいつ見たらどう思うだろうな」


「大…嫌い…」


「…はいはい」

「…落ち着いたら言って。送ってくわ」


 大嫌い、なのに、

 こんなことしないで。

 もっと、好きになっちゃうよ。





 数分後。落ち着いた私は月沢つきさわくんと駅の裏から外に出ると、白と赤のツートンのバイクが停まっていた。


「あれ、月沢つきさわくんのバイク?」


「…そう。カワサキの400」


 名前を言われてもよく分からないけど、かっこいい。


「…バイク乗るの初めて?」


「うん」


「…あいつの妹だから、もしかしたらバイク乗り慣れてるかもしれねぇとも思ったけど」


 バイクに乗り慣れた私…金髪でバイク乗り回してて、ヒャッホー! みたいな感じかな……。


「…だよな、安心したわ」


 月沢つきさわくんは私にすぽっと白のヘルメットを被せて、顎下のハーネスのベルトを首元で固定した。

 私の顔が熱くなる。


「…何?」


「あ、ヘルメットつけるんだなって。みんなヘルメットつけてなかったから…」


「…俺達は慣れてるからいいけど、お前にはまだ早い」


 私は首を傾げる。

「早い?」


「…俺の運転やべぇから途中でふっ飛ばされて最悪…死ぬ」


 私は固まる。


「え……」


 そんな怖い運転なの!?


「…だからヘルメットつけた」

「…大丈夫、ゆっくり運転するから」


「え、暴走族の総長なのに?」


「…言っただろ」

「…俺が出来るのはお前を守ることだけだって」


 月沢つきさわくん……。


 私は月沢つきさわくんの肩に手を当てて唇にキスをする。


 月沢つきさわくんはかっこいい表情で見つめたまま舌を絡めてきた。


 ほどけないように何度も深く、甘く。


 月沢つきさわくんが唇を離すと両足の力が抜けて一緒に崩れ落ちる。


「…あー、なんなのお前」

「…やっぱヘルメットつけて正解だったわ」


 月沢つきさわくんは私の背中を優しく撫でる。

 私は息を乱しながらも涙を零しながら笑う。


「…何その顔、マジ可愛いから」

 月沢つきさわくんは親指で涙を拭き取ると私のシールドを降ろす。


「…もうキス禁止。俺がヤバい」


 私もヤバい。

 嬉しくてついキスしちゃった……。


「…行けそう?」


 私はコクンッと頷く。


 月沢つきさわくんは、はー、と息を吐き、私を持ち上げ、リアシートにまたがらせた。

 そして後ろから首筋に甘いキスを落とす。


「ぁっ…」


 ヤバい、声が…恥ずかしい。

 キス禁止って言ったくせに月沢つきさわくんからするなんてずるいよ……。

 心臓壊れそう。


「…じゃあ、送ってくわ」

 月沢つきさわくんはかっこよくシートに跨るとキーをひねる。


 甲高い爆音が響き、驚く。

 腰に伝わる振動に排気の香り…バイクに乗ってるんだな、と実感する。


「…俺に掴まれ」


 私が、ぎゅっと月沢つきさわくんの背中から前に両手を回すとバイクが走り出した。


 夜空にたくさんの星と月がキラキラと輝く。


 吹き過ぎる夏風が優しくて気持ちいい。


 あぁ、いっそのこと、このまま時間が止まればいいのに。

 そしたら氷雅ひょうがお兄ちゃんに、これ以上嘘を重ねなくて済むのに――――。



 しばらくして15階建てのマンションの前で月沢つきさわくんはバイクを停めた。


 月沢つきさわくんは両ハンドルに体重をかけて伏せ寝する。


月沢つきさわくん、大丈夫!?」

 私は背中から前に両手を回したまま声をかける。


「…往復ちょいキツかったわ」


 え、暴走族の総長なのに!?


「…お前とハメ外しずきた」


 ハメを外す…そういえば私自分から3回もキスして……。


 私の顔が、かあっと熱くなる。


月沢つきさわくん、休んでて。私、一人で行くから」


「…何言ってんの。ちゃんと部屋まで送り届ける」


「でも…」


 月沢つきさわくんはバイクから降りると私をバイクから降ろす。

 私はぎゅっと月沢つきさわくんの右手を握る。


「…おい、あいつに見られたら」


月沢つきさわくん、振りほどいて」


 月沢つきさわくんはぎゅっと恋人繋ぎをし、優しく私の手を振りほどいた。


 あ……。


 月沢つきさわくんは私の頭をぽんっと叩く。

「…行こう」


「うん……」


 玄関の自動扉が開き、私達は中に入る。

 部屋の番号を入力すると自動扉が開き、エレベーターで5階まで上がっていく。


 エレベーターの扉が開いた。

 外に出て少し歩くとマンションの部屋の前に着き、私が玄関の扉を開ける。


 黒の特攻服姿の氷雅ひょうがお兄ちゃんが仁王立ちしていた。


「ありす!」


 氷雅ひょうがお兄ちゃんと月沢つきさわくんが見つめ合う。


「……」


「……」


「…月沢つきさわてめぇ、今までありすと一緒に?」

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