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「ふぅ……」

 時間が過ぎ、昼休み。中庭のベンチに一人座り、ため息をついていた。


 両膝には、ふわっふわのハンバーグにパスタとおにぎりが入ったお弁当箱が乗っかっている。


 あれから気まずくて月沢つきさわくんにラインすら出来てない。

 今の状態でまた会っても、意識し過ぎちゃってだめだろうな。

 はぁ、どうしよう……。


「あなたが星野ほしのさん?」

 ツインテールの女の子が話しかけてきた。


 あ、前に月沢つきさわくんに告白してた女の子…。


「私、月沢つきさわくんと同じC組の朝奈あさなって言うんだけど、あ、苗字ね」

「昨日、月沢つきさわくんにお姫様抱っこされてたよね?」


 私はドキッとする。


 え、見られて……。


「それにさ、私の告白も盗み聞きしてたよね?」


「っ…」


月沢つきさわくんに“興味あるの、星だけだから”って振られて」

「天体に興味あるって思ってたけど、よくよく考えたらさ」

「あなたのことだったんだね」

月沢つきさわくん、ほんと女の趣味悪すぎ!」

 朝奈あさなさんは私の弁当箱を取り上げて投げ捨てる。


 バシャァッ!

 お弁当箱の中身が地面に飛び散った。


 あっ!

 氷雅ひょうがお兄ちゃんが作ってくれたお弁当が……。


 私は慌ててハンバーグとパスタを拾う。


 その様子を見ながら朝奈あさなさんは手を自分の口に当てる。

「うわ~手べっちょべちょ! ぶっざま~!」


「…ぶざまなのは、どっち?」

 黒のショートのウィッグを被った夕日ゆうひちゃんが歩いて来た。


 朝奈あさなさんは急に不機嫌になる。

姫浦ひめうら、何? 地味女は黙ってろよ」


「…あ? てめぇ誰に向かって物言ってんだ?」

 夕日ゆうひちゃんが悪魔のような表情で聞き返す。


 夕日ゆうひちゃん、怖い……。


「も、ももも、もういいわよ」

 朝奈あさなさんは怯えながら走って行った。


「…あー、眠いのに、あーゆーのほんと勘弁して欲しい」

 夕日ゆうひちゃんは愚痴りながら地面に転がったおにぎりを拾う。


「…ありす、大丈夫?」


「うん、助けてくれてありがとう」


 私達は中身を全部拾ってお弁当箱の中に入れるとベンチに座る。


「…パン、半分こしよっか。はい」


「ありがとう」


 半分こ嬉しいな。


「…ありすってさ、怜王れおと上手くいってないの?」


「え、なんで……」


「…怜王れお、なんか悩んでるみたいだったから」


 月沢つきさわくんのこと悩ませちゃった…。

 私、最低だな……。


「…昨日の夜、保健室で目覚めてから月沢つきさわくんと一緒にいて」

「それから月沢つきさわくんのこと意識しずきちゃって……」


「…え、え、何それ尊すぎない? 超可愛い!」

 夕日ゆうひちゃんのテンションが爆上がりした。


「…昨日、そんなに激しかったんだ?」


 私の顔がボッと熱くなる。


 こんなこと聞いていいのか分からないけど、勇気出そう。


「あ、あの、夕日ゆうひちゃんは夜野やのくんとはどこまで……」


「…ん? 最後までだよ」


 私は両目を見開く。

「え?」


「…え?」


「最後?」

 私は聞き返す。


「…うん、最後」


 “最後まで”ってなんだろう……。


「…とにかくさ、恥ずかしいとは思うけど正直に話してみたら?」

「…怜王れおなら絶対分かってくれると思うよ」


「うん、夕日ゆうひちゃん、ありがとう」



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