5
*
凍るような寒さ…。
え…冬の夜?
倒れた小さな私に多数のバイク…?
周りには暴走族達が倒れて…。
なんで?
一体何が……?
黒髪の男の子が近づいて来た。
男の子は背が高く、パーマをかけたショートボブの髪型をしている。
「素晴らしい」
誰?
俺様で荒い感じ…。
「気に入った」
「お前、俺の物になれ」
ぶわっ。
黒い翼の羽が降り注ぎ、男の子の姿が見えなくなった――――。
*
「…はっ」
私は目を覚ます。
今の夢?
「…大丈夫か?」
え? 保健室?
私は寝たまま窓の外を見る。
外、もう真っ暗…。
「
「…あぁ」
「…軽いショック状態で保健の先生が水分補給と体を温めてくれた」
「全然覚えてない…」
「…そう」
「
「…お前が寝ている時に
「…生活指導の先生と一緒に警察に連れて行かれた」
「…残った先生達にさすが優等生だって感謝されたって言ってたわ」
「そっか…」
「…
「うん」
私がゆっくり起き上がると
一口飲むと蓋を閉めて丸い椅子の上に置き、スカートからスマホを取り出す。
スマホを見ると、
「あ、
「…俺のことは言うなよ」
「分かった」
私は電話に出て、右耳にスマホを当てる。
「も、もしもし」
『ありす、無事か?』
「うん、今保健室にいる」
『怪我したのか!?』
「ううん、ちょっと疲れただけ」
『迎えに行く』
「大丈夫。今から電車で家まで帰るね」
『分かった。気をつけて帰って来いよ』
電話が切れた。
「…
「まだ、帰りたくない」
私はセーラー服の上から自分の胸に手を当てる。
「ここのリボン、触られた…」
――――金髪なのは俺だけが知ってればいいだろ?
――――登校する時は必ず黒のウィッグ被ること、いいな?
約束、したのに。
破るなんて許されないのに。
“暴走族
今日だけは許して。
私はぎゅっと布団を掴み、約束を完全に破る覚悟の目で見つめる。
「
そして自分のウィッグも取った。
金髪と白髪。
本当の私と
ドサッ…。
右手からスマホが床に滑り落ちた。
しゅるっ。
あ、セーラー服のピンク色のリボンがほどかれて……。
「…ほどいて」
しゅるっ。
私はネクタイを引っ張り、ほどく。
セーラー服の中に右手が入ってきた。
まるで心を掴み癒すように、
白いブラのリボンをぎゅっと掴まれる。
私が少し口を開けると、
ギシッ……。
近づいてくる甘い唇。
静かに両目を閉じると
窓から見える真っ暗な夜空。
真っ白な月が陰る。
もう声にすらならない。
私の心に絡まったリボンが破れた。
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