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 そして数分後。


月沢つきさわくん、はい」

 コンビニから出て来た私はサワー味のアイスキャンディーの袋を手渡す。


「…お前の分は?」


「私は大丈夫」

月沢つきさわくんと初めて外に出掛けられて」

のぞむ先輩に会えて嬉しかったから」


 私が優しく微笑むと月沢つきさわくんはアイスキャンディーの袋を破る。


 アイスキャンディーを取り出してガリッとかじり、なぜか私の顎を持つ。

 びっくりして口を少し開けると月沢つきさわくんはそのまま唇を塞いだ。


 アイスキャンディーが口の中でふわりと溶けて、

 甘酸っぱい感覚に襲われる。


 私の心に絡まったリボンが甘く弾けて、止まらない。


 月沢つきさわくんの唇が離れる。


月沢つきさわくん、人前…」


「…人前じゃない方が良かった?」


「ううん、ただびっくりして…」


 月沢つきさわくんは私の耳元に唇を近づけ囁く。

「…刺激的すぎて?」


 私の顔がボッと熱くなる。


月沢つきさわくん、も、もしバレたら…」


「…人少ないから誰も見てねぇよ」

「…アイスキャンディーのおかげで涙引っ込んだわ」


 月沢つきさわくんは優しく笑い、人差し指を自分の唇に当てる。


「…星野ほしの、今日のことは秘密な」




 夜。私は帰りの電車のソファーに座りながらスマホを見ていた。


 まだ胸、ドキドキしてる。

 いつもより帰るの遅くなっちゃった…。

 氷雅ひょうがお兄ちゃんになんて言おう…。


 ガコンッ。

 車内が大きく揺れる。


 バランスを崩し、隣の男の子の肩にぶつかった。


 男の子は背が高く、クリーム色の髪をし、甘い顔をしている。


「あ、すみませ…」


「ううん」

「きみ、もしかして飾紐りぼん高校?」


「え、なんで…」


「セーラーにピンクのリボンの高校ってなかなかないし、そうかなって」


「はい。飾紐りぼん高校です」

「あなたは書庫蘭しょこら高校?」


「え、なんで分かったの?」


「お兄ちゃんが通ってて…」


 私はハッとする。


 月沢つきさわくんに氷雅ひょうがお兄ちゃんの写メ見せたらだめって、絶対秘密だって言われてたのに。

 氷雅ひょうがお兄ちゃんのこと話したらマズいんじゃ…。


「へぇ。偶然だね」

「俺、天川鏡あまかわきょう書庫蘭しょこら高校3年。きみは?」


「私は星野ほしのありす、飾紐りぼん高校2年です」


「ありす?」

 天川あまかわくんが驚く。


「え?」


「いや、めちゃ可愛い名前だね」

「しかも年下かぁ。本命にしたいくらい」


 私は動揺する。

「え…」


「あー、でも俺本命作らないタイプだから大丈夫」


 それって逆に大丈夫じゃないんじゃ…。


飾紐りぼん高ってことはさ、月沢怜王つきさわれおっている?」


「あ、はい。でもなんで知って…」


「白い鳥にいっぱい呟かれてるからね」


「白い鳥ってなんですか?」


 天川あまかわくんが自分のスマホを見せてきた。


 私は驚く。

 月沢つきさわくんのことがたくさん呟かれていた。


 え、こんなに!?

 どうしよう。

 氷雅ひょうがお兄ちゃんにバレるのも時間の問題かも…。


「…相変わらずくせぇ香りさせてんなぁ」

「…名前がありすで月沢つきさわの香りがするなんて」

「…月沢つきさわの女でほぼ間違いないね、ラッキー」

 天川あまかわくんは誰にも聞こえない声で呟く。


 ガコンッ。

 電車が止まった。


 天川あまかわくんは私に倒れかかる。

 そして私の鞄の脇に黒い物を落とす。


「…設置完了っと」


天川あまかわくん、大丈夫?」


「うん、じゃあ俺ここで降りるね」


 天川あまかわくんは、にこっと笑う。


「またね、ありすちゃん」


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